ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

テクノロじいやに私はなる―2「地域活動」
イノベーション先端技術AI音楽情報教育

テクノロじいやに私はなる―2「地域活動」

🕓 1/4/2024 ↻ 1/18/2024

 AI、ブロックチェーン、IoT、スマートシティー、自動運転――これらのキーワードを目にすることが増えています。新しいテクノロジーを生かすためには、「社会実装」を進める必要があります。日々の暮らしに役立てられてこそ意味があるとの思いで、情報発信しています。


 今回お届けするのは……

地域活動で音楽制作にICTを活用してみた


 元教員ということで、地域では「ハダノ先生」と呼ばれることがあります。

 昨年末、近所の子ども食堂に招かれました。10台はいったiPadのセットアップとプレゼン発表会のお手伝いです。

田舎の風景

プレゼン発表者登場にふさわしい音楽は?

 プレゼン発表会については、各発表生徒登壇時のアタックムービーの作成を引き受けました。

 例年パワーポイントで作っているというので、昨年のものをベースに作ります。PC環境の違いに苦労しながら何とか進んでいきました。くわしくは、、、 → 🔗知らずに使われた特殊なフォントの代わりにフリーフォントを埋め込んで、パワーポイントの文字崩れを直してみた件

TEDスタイルでプレゼンする子ども

 せっかく自分が担当するのだから、BGMを一新しようと考えました。

 候補の曲を頭に思い浮かべながら、文章生成AIに聞いてみました。「クラシック音楽」だと著作権が切れてないものもあるので、🔗「バロック音楽」 で、、、

ハダノ
登場にふさわしいバロック音楽を10曲教えてください。

ChatGPT
バロック音楽の代表的な作品を10曲選んでみました。以下のリストをご覧ください:
  1. ヨハン・ゼバスティアン・バッハ - ブランデンブルク協奏曲
  2. アントニオ・ヴィヴァルディ - 四季
  3. ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル - 水上の音楽
  4. ヨハン・パッヘルベル - カノン
  5. クラウディオ・モンテヴェルディ - マドリガーレ集
  6. アルカンジェロ・コレッリ - クリスマス協奏曲
  7. ヘンリー・パーセル - トランペット・チューンズ・アンド・エア
  8. ゲオルク・フィリップ・テレマン - ヴィオラ協奏曲 ト長調
  9. ヨハン・ゼバスティアン・バッハ - マタイ受難曲
  10. アントニオ・ヴィヴァルディ - ストラヴァガンツァ

これらの作品はバロック音楽の特徴である豊かな感情表現や対位法、そして華麗な装飾を楽しむことができます。お聴きになる際は、それぞれの作品が持つ独特の魅力を感じ取っていただければと思います。どうぞお楽しみください!


 以前、同じような質問をしたときはヴィヴァルディだらけでした。「いくら四季が日本特有の人気曲だとしてもこれはないだろう」と思いました。今回はいろんな作曲家の作品が紹介されており、随分まともになっています。


 ただ、5番・8番・9番など明らかに登場にふさわしくないものがあるので、少し絞り込んで質問してみます。

ハダノ
登場にふさわしいヘンデルの器楽曲を10曲教えてください。

ChatGPT

ヘンデルの器楽曲の中から、特に登場にふさわしいと思われる10曲を選んでみました。以下のリストをご覧ください:

  1. 水上の音楽 第二組曲 HWV.349より「アラ・ホーンパイプ」
  2. 王宮の花火の音楽 HWV.351より「序曲」
  3. 12の合奏協奏曲集 Op.6第6番 HWV.324より「ミュゼット」
  4. オルガン協奏曲第13番「カッコウとナイチンゲール」 HWV.295
  5. チェンバロ組曲第1番イ長調 HWV 426
  6. チェンバロ組曲第2番ヘ長調 HWV 427
  7. チェンバロ組曲第3番ニ短調 HWV 428
  8. チェンバロ組曲第4番ホ短調 HWV 429
  9. ソナタ作品1からNo.7
  10. ハレ・ソナタ第1番

これらの作品はヘンデルの器楽曲の中でも特に有名で、彼の音楽の魅力を存分に感じることができるでしょう。お楽しみください!

 イメージに近づいてきました。以前のように他の作曲家の作品が紛れ込むこともありません。


 ただ、器楽曲という指定では5番~8番のような独奏曲が含まれてしまいます。もっと躍動感がほしいので、さらに絞り込んで質問してみます。

ハダノ
ヘンデルのオラトリオに含まれる曲のうち、登場にふさわしい軽快な器楽合奏曲を10曲教えてください。

ChatGPT

ヘンデルのオラトリオに含まれる軽快な器楽合奏曲を10曲選ぶとしたら、以下のような曲が挙げられます:

  1. メサイア HWV.56より「ハレルヤ・コーラス」
  2. ユダス・マカベウス HWV.63より「見よ、勇者は帰る」
  3. ソロモン HWV.67より「シバの女王の入城(到着)」
  4. 水上の音楽 HWV.349より「アラ・ホーンパイプ」
  5. 王宮の花火の音楽 HWV.351より「序曲」
  6. 12の合奏協奏曲集 Op.6第6番 HWV.324より「ミュゼット」
  7. オルガン協奏曲第13番「カッコウとナイチンゲール」 HWV.295
  8. メサイア HWV.56より「パストラル・シンフォニー」
  9. ユダス・マカベウス HWV.63より「行進曲」
  10. ソロモン HWV.67より「祭りの行進曲」

これらの曲はヘンデルのオラトリオから選ばれたもので、それぞれが劇的な場面や登場人物の紹介に適した軽快で明るい音楽です。お楽しみください!

 求めていた答えが出てきました。1番と2番は合唱曲ですが、器楽合奏バージョンも広く演奏されているのでよしとしましょう。

 これらのうち、プレゼン発表者の登壇にピッタリの音楽として、3番の「シバの女王の入城」を選びました。


生成AI用PCでBGM制作

 🔗「シバの女王の入城」は、曲名は知らんけど聞いたことあるぞ とよく言われる曲です。AI編曲なしでそのまま使えそうです。 → 🔗AIで編曲してみた!

  • フリーMIDIをダウンロードし、DAWに読み込ませる
  • 冒頭から一区切りつくまでを切り出す
  • さらに切り貼りし、15秒程度に収める
  • 各パートにVST音源を割り当て、定位や音量を調整
  • 全体のテンポを指定し、最後はゆっくりめで音量も盛り上げる
  • リバーブやマキシマイザなどのVSTエフェクトで仕上げる
  • オーディオミックスダウンしてできあがり
Cubase Elements 13

 ノートPCでの作業では、🔗DAW(音楽制作ソフト) に重い処理をさせると時間がかかっていました。CPUに負荷がかかり、オーディオミックスダウンが途中で止まることもしばしばでした。音量やエフェクトの量を抑えては何度もトライする必要がありました。


シバの女王の入城ジャケット画像

 ところが新しいデスクトップPCでは、瞬時に終わりました。あまりにあっけなく、「今までの苦労は何だったんだ」「こんなことなら早くマシンを乗り換えるんだった」とつぶやいていました。生成AI用PCは音楽制作も楽にこなしてくれるとわかりました。

 ♪ シバの女王の入城 プレゼン発表会Ver.

制作:ハダノ 原曲:ヘンデル作曲「ソロモン」第3幕シンフォニア

VST:UVI,VWinds,Neoverb,FireMaximizer


機種を問わず使えるフリー音源を求めて

 年末のプレゼン発表会はうまくいきました。

 年が明けて、耳寄りなニュースがはいってきました。

sfz対応iPadアプリisfizz

 音楽を作るとき、WindowsPCとiPadとの互換性問題にはさんざん悩まされてきました。

 🔗Imoxplus社のサイトでWindows用Respiroを購入し、試行錯誤しながら音色を改造し、無料の🔗iPad対応アプリ Respiro wind-synth に読み込ませて使う……ということもしていました。くわしくは、、、→ 🔗物理モデリング音源Respiroを編集して、ユニークな音を作ってみた

iPadアプリRespiro wind-synth

 iPad用アプリは無料でも、Windows用Respiroから音色をエクスポートするときに相手のIDを指定するようになっているので、自由に配布できません。


 サンプリング音源の中には無料で配布されているものもありますが、たいてい 🔗Kontakt というサンプラーの有料版 が必要です。また、せっかく集めてもそれらの音源をiPadで使うことは不可能でした。iPad用Kontaktが存在しないためです。

 モデリング音源ではWindows版と同じ音源のiPad版が出ていることがたまにあります。iPad版があるだけましですが、同じものなのに2重に支払うのは理不尽だと感じます。


 その点、SFZ形式はオープンソースなので、サンプラーさえあれば機種を問いません。PC用として有名なのが、🔗sforzando です。今回 isfizz によってiPadでもSFZ音源が使えるようになったので、さっそく試してみました。


SFZ音源なら自由に改造できる

 「EWI 用の無料音源 GARRITAN ARIA はSFZ規格で、ARIA PLAYER と sforzando は互換性がある」と聞いたことがあります。「うまくいけばARIAの中の好きな音源だけ取り出してiPadで鳴らすことができるかもしれない」と夢がふくらみます。

 GARRITAN ARIA の各音源は、生々しさはないものの音域が広く素直なので、使いどころはあります。特にViolin(TH)は多くの人から高く評価されています。

 SFZファイルはテキストファイルです。中を見ると、音階ごとに各音声ファイルを呼び出したり効果を加えたりする記述が続きます。プログラミングっぽいことも少しでき、HTMLやCSSに似ている感じです。音声ファイルのパスを書き換えれば、必要な部分だけ取り出せそうです。

 PCの sforzando でうまくいったので、iPadに移して isfizz で読み込んでみました。若干サポートされていない命令があったものの、ほぼ同じように動きました。大成功です。


 SFZ音源の利点を整理すると、、、

  • サンプル音声ファイルのセットがあれば、SFZ音源が作れる
  • オーケストラ以外の楽器でも音声ファイルがあれば、SFZ音源が作れる
  • 大小の楽器の音声をセットにすれば、広い音域の新音源ができる
  • CC2(ブレス)受信を記述し、ウインドシンセ用音源にできる
  • CC1(ホイール)受信を記述し、ビブラートなどの効果をつけられる

、、、と自由に改造できるうえに無料とくればたまりません。


データをiPadへ転送するときは、Documents by Readdle が便利

 EWI用のリコーダー音源をずっと探していましたが、この方法で作ることができました。ソプラノ・アルト・テナー・バスが合体したSFZ音源です。

リコーダーのセット

 音源をPCからiPadへ転送するときは、🔗Documents by Readdle が便利です。

  1. 音源をフォルダごとGoogleドライブに入れる
  2. Documents by Readdle のGoogleドライブの中の音源フォルダをDocumentsに保存
Documents by Readdle操作2番
  1. マイファイルのInboxに入った音源フォルダをiCloudのDocumentsにコピー
Documents by Readdle操作3番
  1. 純正のファイルアプリで、iCloud Drive - Documents by Readdle - 音源フォルダ を長押しし、1項目をコピー
Documents by Readdle操作4番
  1. このiPad内 - isfizzフォルダ(作っておく) を開き、ペースト
Documents by Readdle操作5番
  1. これで音源フォルダが転送されるので、izfizz アプリの Load file で、~.sfz を読み込む
izfizz操作6番

 WindowsPCとAndroid端末なら、USBケーブルでつなぐだけで中のフォルダやファイルを自由にいじれます。iPadの場合は中にはいらせてくれないので、結局クラウド経由になります。

  • PCローカル → Googleのクラウド → Appleのクラウド → iPadローカル

という手順で、やっとファイルやフォルダの転送ができます。


 🔗Piascore のようにGoogleドライブからファイルを直接読み込めるアプリもありますが、izfizz は、ローカルに移さないとダメなようです。

 Google⇔Appleのクラウド間の壁を越えることは、iPad用の「Googleドライブ」アプリと「ファイル」アプリでは困難です。そこを解決してくれるのが Documents by Readdle のすごいところです。


無料のSFZ音源だけで音楽を作ってみた

 🔗Virtual Playing Orchestra は、sfz形式の無料のオーケストラサンプルライブラリ です。高品質な楽器音がたくさん収録されているようです(← Sonatina Symphonic Orchestra, No Budget Orchestra, VSCO2 Community Edition, University of Iowa, Philharmonia Orchestra, Mattias Westlund)。


シバの女王の入城ジャケット動画

 これを使って、「シバの女王の入城」を鳴らしてみました。せっかくなので、フルートパートには、例のリコーダー音源を割り当てました。


※ ジャケット動画は、🔗拡張機能でグラビア動画を生成 のやり方でAIで作りました(img2imgでblazingDriveを使用)。

 ♪ シバの女王の入城 無料SFZ音源Ver.

制作:ハダノ 原曲:ヘンデル作曲「ソロモン」第3幕シンフォニア

VST:virtual-playing-orchestra,BaroqueRecorder,Neoverb,FireMaximizer


 有料音源とは趣の違う味わいの音楽ができました。これはこれでアリだと思います。


【結論】地域活動で音楽制作にICTを活用するのは有効

 音楽が脳に良い影響を与えることを示す研究はたくさん知られています。それなのに、コロナ禍では「不要不急」とされて制限されました。

 いざ地域活動などで音楽を使おうとすると、著作権などの権利関係が気になります。古い音楽を元に自分で作れれば最高です。

 地域活動では、あまり予算をかけられないことが多いと思います。そんなとき、無料のものは助かります。自由に改造できるオープンソースだと大助かりです。


 今回のように地域活動で音楽制作にICTを活用すれば、権利関係や経費の心配をせずに音楽を用意できます。「古くからずっと愛されてきたものは、いずれ人類の共有財産になっていくんだ」「少しの面倒くささを乗り越えれば、必ず道はひらける」と確信がもてました。


 ハダノは決意を新たにしました。

 「どこに相談したらいいかわからない」迷える人々を一歩先行くICTで支援し、地域の幸せづくりに奉仕しよう……と。


テクノロじいやに 私はなる!!!

テクノロじいや

※ 「シバの女王の入場」は人気曲なので、バロック名曲集のCDにはたいてい入っています。
古楽器オーケストラの演奏は作曲当時の意図をくみ取ったものが多く、ピノック指揮のこちらは特に躍動感にあふれています(ハダノはホグウッドのCDも持っているがそちらも雅な響きで捨てがたい……)。
プレゼン発表会のBGMを作っていると、「私たちの披露宴で流した曲ね」と妻もなつかしがっていました。


※ スタインバーグの Cubase は、国内外で人気のDAWソフトウエアです。
ハダノの音楽制作はこれを中心とし、音源やエフェクトのプラグインを駆使しながら進めています。
もっと動作の軽いDAWに乗り換えようかと検討しましたが、デスクトップPCでサクサク動いたので迷いが吹っ切れました。


※ Kontakt は最も普及しているサンプラーです。
有料音源は、無料の Kontakt Player で動くものが多いのですが、ほとんどの無料音源は、有料の Kontakt でないと動きません。
ハダノは仕方なく購入しましたが、なんだかんだ出番が多いので買ってよかったと思います。


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教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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