ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

AIで編曲してみた!―2
イノベーション音楽AISTEAM教育DX推進教師のバトン

AIで編曲してみた!―2

🕓 9/15/2024 ↻ 9/24/2024

アニメソングをAIツールで編曲してカラオケを作成できるか

 DX(データとデジタルによる変革)のうち特に重要なのは、AIによる意思決定・アクションです。ゆくゆくはAIによる業務自動化で人手不足が解消され、人はより本質的な仕事に集中できるでしょう。

 「でも、AIなんて難しくて私には無理」とあきらめてはいませんか。どんな技術も「作る」のに比べて、「使う」だけならはるかに簡単です。高度なAI技術を手軽に使えるようにしたAIツールがたくさん出てきました。AIによる音楽づくりも手に届くところに来ているのです。

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昭和レトロっぽいアニメのオープニングがクセになる!

教員A
私がはいっているバンドで次の曲を何にしようかと検討中です。
レトロ調の曲でいいのがありませんか?

ハダノ
クラシック以外で私が聴くといったらアニメソングですが、「ホホエミノオト」なんてどうですか?
昭和レトロっぽいアニメのオープニングがクセになるんですよね。

教員A
これって、楽譜ありますか?
コード付きならバンドで演奏できるんですが、、、

ハダノ
残念ながら、楽譜はありません。
いい曲ですが、マイナーなので広まってないみたいです。

、、、ということで、すぐには役に立ちそうもありません。

 「それならば、自分で楽しもう」と考え、アニメソングの編曲に挑戦してみました。


Orb Composer をアニメソングの編曲に使うと、、、

 🔗前回の記事(卒業式BGM用にAIツールでイギリス民謡を編曲) のあと、何回か Orb Composer を使いました。「正直なところ、自動作曲で作った曲がイマイチだったり、操作をしていて「あれっ」と思うことがあったり、通常価格が高かったりで、万人に勧められるとは言えません」と述べた通り、違和感が残ったまま使っていました。

Orb Composer のテンプレート選択

 今回、 Orb Composer のテンプレートの Pop/Rock を初めて選択しました。

 まず、耳コピしたメロディー(MIDI)をImportします。このとき、大切なのはブロックの分け方です。

 全54小節をどう分けるかは、難問です。Orb Composer は、4小節・8小節・16小節で区切ることを前提に作られています。曲の流れから、次のようにブロックを分けてみました。

 8, 8, 8, 8, 4, 8, 8, 2 

 あとは、読み込んだメロディー(U.Melody)以外のパートに役割(Melody,Chords,Bass,Drums)と音源を割り当てるだけです。

 ところが、できた音楽が「気持ち悪い」のです。♪(Creates notes)ボタンを押すたびに違うフレーズがつくられますが、どれも「気持ち悪い」のです。コード(和音)を変えればいいかもと考え、C7(Creates Chords)ボタンを押しますが、コードは大きくは変わりません。


自動生成されたコードを手動で置き換え、カラオケもどきを

 「そもそも、Orb Composer が自動生成したコードがよくないのでは」と考え、DAWのCubase でコードを検出してみました。 → 🔗MIDI からコードイベントを抽出する

 案の定、全く異なるコードでした。「これが違和感の元だったか……」と気づいたものの、途方に暮れます。


 ふと思い出したのが、Scaler 2 をずいぶん前に買ったまま使っていなかったということです。

 「Scaler 2 は MIDI とオーディオの強力な検出により、現在のキーとスケールを判断し、音楽に合ったコードを提案します」とあるので、期待できそうです。

 ところが実際に使ってみると、

  • 「現在のキーとスケール」は正確に検出してくれる
  • 音が重なった部分は、コードを検出してくれる
  • 膨大なジャンル別・作曲家別のコード進行パターンが収録されている
  • スケールに合うコードの候補を提案してくれる
  • 単音が連なったフレーズを解析して、コードを検出・提案してくれるわけではない

、、、ということがわかりました。

 結局、Cubase で抽出したコードイベントを参考にしながら、Scaler 2 で1小節ずつフレーズとコードを鳴らしてしっくりくるものを選ぶしかなかったのです。

Cubase で抽出したコードを参考にScaler 2 でコード選び

 「音楽理論の知識や音感がもっとあればなぁ……」と悔やみながらも、どうにかコードを確定しました。

↓↓↓ 冒頭の8小節は、こんな感じ…… ↓↓↓

コード生成方法 1 2 3 4 5 6 7 8 
Orb(自動)Am GM DM Am Bm DM Am AM 
Cubase(自動) GM-Em7BmDM-DbMCM-AmEmCM-BM 
Scaler2(手動)GMEm7BmDMCMDMCMBm

 Orb Composer にもどり、コードを置き換えてみると、違和感はかなり減りました。

 あとは、気になる部分を Creates(生成)し続けます。本当は、各パラメーターの意味を理解して細かく設定するのが正しいやり方だと思います。コード進行をもとにランダムに生成しているだけだと、メロディーにジャストフィットしません。せいぜい「カラオケもどき」ができるだけです。

 ある程度いい感じになってきたら、読み込んだメロディー(U.Melody)をミュートして、「カラオケもどき」のできあがりです。例によって、Export MIDI で外へ書き出し、Cubase で仕上げます。


AIツール Orb Composer でアニメソング「ホホエミノオト」を編曲して作ったカラオケもどき

Orb Composer でホホエミノオト編曲

 カラオケを作ろうとしてできたのが「カラオケもどき」でした。歌を重ねると不思議とそれらしく聴こえるのは、🔗「パートナーソングの原理」 でしょう。

 ♪ 「ホホエミノオト」のコード進行によるパートナーソング

制作:ハダノ 原曲:本間昭光「ホホエミノオト」 編曲:Orb Composer Pro S 1.5

VST:UVI,Pianoteq,Kontakt,SampleTank,Neoverb,FireMaximizer


「ホホエミノオト」パートナーソングのジャケット画像

 ジャケット画像は、画像生成AIで 「アストロノオト」に出てきそうなシーンをイメージして生成したものを組み合わせました。

 昭和レトロのSFラブコメっぽい雰囲気は出ています。


アニメソング編曲にAIを使ってみて

 クラシック音楽と違い、アニメソングなどのポップスは、「コード進行が命」の面が強いと思います。それだけ、コード検出には精度が求められます。

 AIツールは、オールマイティではありません。コードの自動検出が苦手なら、他のツールを使って手動で生成すればよいだけです。それでも、適切なコードを与えられた Orb Composer が、オブリガート・コード伴奏・ベース・ドラムなどのパートを生成するのを見ると、「自分が一生かかっても作れない音楽を次々と作りやがって……」と、感心してしまいます。


 画像生成AIが抽象画が苦手なら、他のデザインツールを使えばよいのです。 → 🔗抽象的で美しい背景デザインを Mossaik.app で作成してみた

 AGI(汎用人工知能)ができるまでは、AIツールは手段の選択肢を増やしてくれるものと考え、上手に活用したいものです。

 要するに、「適材適所」です。



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教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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