ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ
DX(データとデジタルによる変革)のうち特に重要なのは、AIによる意思決定・アクションです。ゆくゆくはAIによる業務自動化で人手不足が解消され、人はより本質的な仕事に集中できるでしょう。
「でも、AIなんて難しくて私には無理」とあきらめてはいませんか。どんな技術も「作る」のに比べて、「使う」だけならはるかに簡単です。高度なAI技術を手軽に使えるようにしたAIツールがたくさん出てきました。AIによる音楽づくりも手に届くところに来ているのです。
、、、ということで、すぐには役に立ちそうもありません。
「それならば、自分で楽しもう」と考え、アニメソングの編曲に挑戦してみました。
🔗前回の記事(卒業式BGM用にAIツールでイギリス民謡を編曲) のあと、何回か Orb Composer を使いました。「正直なところ、自動作曲で作った曲がイマイチだったり、操作をしていて「あれっ」と思うことがあったり、通常価格が高かったりで、万人に勧められるとは言えません」と述べた通り、違和感が残ったまま使っていました。
今回、 Orb Composer のテンプレートの Pop/Rock を初めて選択しました。
まず、耳コピしたメロディー(MIDI)をImportします。このとき、大切なのはブロックの分け方です。
全54小節をどう分けるかは、難問です。Orb Composer は、4小節・8小節・16小節で区切ることを前提に作られています。曲の流れから、次のようにブロックを分けてみました。
8, 8, 8, 8, 4, 8, 8, 2
あとは、読み込んだメロディー(U.Melody)以外のパートに役割(Melody,Chords,Bass,Drums)と音源を割り当てるだけです。
ところが、できた音楽が「気持ち悪い」のです。♪(Creates notes)ボタンを押すたびに違うフレーズがつくられますが、どれも「気持ち悪い」のです。コード(和音)を変えればいいかもと考え、C7(Creates Chords)ボタンを押しますが、コードは大きくは変わりません。
「そもそも、Orb Composer が自動生成したコードがよくないのでは」と考え、DAWのCubase でコードを検出してみました。 → 🔗MIDI からコードイベントを抽出する
案の定、全く異なるコードでした。「これが違和感の元だったか……」と気づいたものの、途方に暮れます。
ふと思い出したのが、Scaler 2 をずいぶん前に買ったまま使っていなかったということです。
「Scaler 2 は MIDI とオーディオの強力な検出により、現在のキーとスケールを判断し、音楽に合ったコードを提案します」とあるので、期待できそうです。
ところが実際に使ってみると、
、、、ということがわかりました。
結局、Cubase で抽出したコードイベントを参考にしながら、Scaler 2 で1小節ずつフレーズとコードを鳴らしてしっくりくるものを選ぶしかなかったのです。
「音楽理論の知識や音感がもっとあればなぁ……」と悔やみながらも、どうにかコードを確定しました。
↓↓↓ 冒頭の8小節は、こんな感じ…… ↓↓↓
コード生成方法 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Orb(自動) | Am | GM | DM | Am | Bm | DM | Am | AM |
Cubase(自動) | GM-Em7 | Bm | DM-DbM | CM-Am | Em | CM-BM | ||
Scaler2(手動) | GM | Em7 | Bm | DM | CM | DM | CM | Bm |
Orb Composer にもどり、コードを置き換えてみると、違和感はかなり減りました。
あとは、気になる部分を Creates(生成)し続けます。本当は、各パラメーターの意味を理解して細かく設定するのが正しいやり方だと思います。コード進行をもとにランダムに生成しているだけだと、メロディーにジャストフィットしません。せいぜい「カラオケもどき」ができるだけです。
ある程度いい感じになってきたら、読み込んだメロディー(U.Melody)をミュートして、「カラオケもどき」のできあがりです。例によって、Export MIDI で外へ書き出し、Cubase で仕上げます。
カラオケを作ろうとしてできたのが「カラオケもどき」でした。歌を重ねると不思議とそれらしく聴こえるのは、🔗「パートナーソングの原理」 でしょう。
♪ 「ホホエミノオト」のコード進行によるパートナーソング
制作:ハダノ 原曲:本間昭光「ホホエミノオト」 編曲:Orb Composer Pro S 1.5
VST:UVI,Pianoteq,Kontakt,SampleTank,Neoverb,FireMaximizer
ジャケット画像は、画像生成AIで 「アストロノオト」に出てきそうなシーンをイメージして生成したものを組み合わせました。
昭和レトロのSFラブコメっぽい雰囲気は出ています。
クラシック音楽と違い、アニメソングなどのポップスは、「コード進行が命」の面が強いと思います。それだけ、コード検出には精度が求められます。
AIツールは、オールマイティではありません。コードの自動検出が苦手なら、他のツールを使って手動で生成すればよいだけです。それでも、適切なコードを与えられた Orb Composer が、オブリガート・コード伴奏・ベース・ドラムなどのパートを生成するのを見ると、「自分が一生かかっても作れない音楽を次々と作りやがって……」と、感心してしまいます。
画像生成AIが抽象画が苦手なら、他のデザインツールを使えばよいのです。 → 🔗抽象的で美しい背景デザインを Mossaik.app で作成してみた
AGI(汎用人工知能)ができるまでは、AIツールは手段の選択肢を増やしてくれるものと考え、上手に活用したいものです。
要するに、「適材適所」です。