ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

AIでアヴェマリアを作ってみた!
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AIでアヴェマリアを作ってみた!

🕓 12/9/2022 ↻ 12/12/2022

手軽に使えるAIツールで自然な音楽を

 いざDXに取り組もうとしたものの、

 「いろんな技術があるけど、どれも難しそう」

 「何からやればいいかわからない」

という声が多く聞かれます。

 DX(データとデジタルによる変革)のうち特に重要なのは、AIによる意思決定・アクションです。ゆくゆくはAIによる業務自動化で人手不足が解消され、人はより本質的な仕事に集中できるでしょう。

 「でも、AIなんて難しくて私には無理」とあきらめてはいませんか。どんな技術も「作る」のに比べて、「使う」だけならはるかに簡単です。高度なAI技術を手軽に使えるようにしたAIツールがたくさん出てきました。

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音楽づくりにAIを使ってみよう

 🔗『最近話題になった 音楽生成AI まとめ』 によると、「テキストからBGMを生成」「音楽を学習してそれっぽい新曲を生成」「オーディオからMIDIに変換」などさまざまなツールが話題になっています。作曲系ツールは音楽センスが要求されるので、既存の曲に味付けをするエフェクト系ツールを中心に使っていきたいと思います。


耳コピーに役立つAIツール

  • Demucs  音楽の練習や耳コピーをするとき、音源が分離できると便利です。Demucsは、ボーカル・ベース・ドラム・その他 の4つに音源を分離してくれます。音楽の種類によって差はありますが、以前からあったカラオケ作成ツールより高精度に分離できます。

 一般にAIの計算は、CPUよりGPUの方が数倍高速に実行できます。Demucsでは、GPUでの処理を選ぶことができ、20倍近く高速化できるようです。ハダノのPCには、業界トップNVIDIA社の RTX2070 というGPUが入っているので、実用的な速度で実行させることができました。

🔗AIでボーカル・ドラムを取り出す、無料音声分離「Demucs」を試す

Demucs
  • Basic Pitch  オーディオデータをMIDIに変換してくれます。複雑なものだと誤変換が多くなりますが、一から入力するよりは楽です。耳コピーでカラオケMIDIを作るのを助けてくれます。

🔗Spotifyがオーディオデータを自動でMIDI変換するAI搭載ツール「Basic Pitch」をリリース

Basic Pitch

音楽の加工に役立つAIツール(VSTプラグイン)

  • DDSP  与えられた音楽を別の楽器の演奏に変換してくれます。「ギターを弾いてみたけど、フルートの音に変えたい」「自分で歌ってみたけど、生の声を聴かれると恥ずかしい」などの場合にピッタリです。

 11種類の楽器の学習済みモデルがプリセットされています。その楽器の得意な音の範囲を外れると、変換が破綻してしまうようです。そのようすもグラフィカルにリアルタイム表示されます。懸命に変換しようとするAIがけなげに思えます。

🔗DDSP-VST Magentaから初のVSTプラグインは音響合成を使用したNeural Synthesizer

DDSP
  • Clarity Vx  音楽から雑音を取り除いてくれます。録音時の環境ノイズ・機器ノイズがかなり減ってクリーンな音になります。DDSPの変換が破綻したときの歪みや雑音など、デジタルくさい音さえも軽減されます。中央のつまみを回すほど雑音が減るのですが、同時に音楽のスパイスとなる音も除去されるので、やりすぎるとダメです。
Clarity Vx
  • Neoverb  音楽に自然なリバーブ(残響)をつけてくれます。通称おにぎりバーブプラグインと呼ばれています。NeoverbはリバーブをAIによってデザインでき、「かかりすぎてお風呂みたいに」「音がこもってごちゃごちゃに」という失敗がありません。

 カラフルなおにぎりの中の丸を動かして、3種類のリバーブを自由にブレンドできます。あとは Dry/Wet でかかり具合を調節するだけでいい感じに仕上がります。100%Wetにすると、「ツンツン → デレデレ」ぐらい変わります。

Neoverb

AIツールで作ったアヴェマリア

 三大アヴェマリアのひとつであるカッチーニのアヴェマリアを、先月一周忌を迎えた母に捧げることにしました。

 カラオケは UVI Orchestral Suite の String Ensemble で演奏し、歌声は Bassoon に変換、あとは前記の要領で作成しました。DAWは Cubase Elements を使っています。処理が重いせいか、しばしば動作がもたつきましたが、何とかできあがりました。

カッチーニ の アヴェ マリア

制作:ハダノ MIDI生成:Demucs,Basic Pitch

VST:UVI(String Ensemble),DDSP(Bassoon),Clarity Vx,Neoverb

UVI Orchestral Suite の String Ensemble

 ジャケット画像は、画像生成AIに Ave Maria と打ち込んで生成させました。何語かわからない文字やキリスト教的でない描写が微妙ですが、それっぽい雰囲気は出ています。


音楽づくりにAIを使ってみて

 🔗相棒と呼べる電子楽器を求めて の記事の中で、

”電子楽器は、デジタル技術による量産化で広く普及してきたが、内蔵音源は「不規則性」がないため味気ない音になりがち。”

と述べました。

 今回実感したのは、デジタル特有の「不規則性」も存在するということです。音が突然「プチッ」と途切れたり、処理に伴う歪みや雑音が発生したりします。そういう「デジタル臭」を和らげるのにもAIツールは役立ちます。

 ただし、やりすぎると味気ない音になってしまいます。加減は、人の感性しだいです。

 できあがった音楽を流していたら、父が「ア~ヴェマリ~ア…」と自然に口ずさんでいました。



※ ハダノが最初に買ったサンプリング音源です。
圧倒的なコスパと軽さを誇る音源で、オーケストラで使われる基本的な楽器はだいたいそろっています。
迷ったときこれを使えば、そこそこの仕事をしてくれます。


※ AIの力でノイズを取り去る強力なVSTエフェクトプラグインです。
ボーカル曲に使うと、本当にクリーンな音になります。
ハダノは、管楽器の曲にも使って効果を感じています。


※ カラオケ店で歌うとき、エコーをかけるとうまく聞こえます。
ハダノはリバーブのわざとらしさが嫌いで、DAW付属のものを薄くかけてすましていました。
Neoverbを使ってみて、AIによるリバーブの音楽的なナチュラルさに驚きました。

教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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