ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

無知はゼロではなく、マイナス(無理解)になりがち
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無知はゼロではなく、マイナス(無理解)になりがち

🕓 7/3/2024 ↻ 7/19/2024

中途半端な知識が改革を阻害する

 🔗「専門家へのリスペクトが足りない!」🔗「無理解と同調圧力が専門家を苦しめる」 で、

  • 思考停止して不満ばかり言う消費者は困りもの
  • カスハラに反撃できない専門家の地位向上を
  • 日本では、専門的スキルよりもソフトスキルが重宝される
  • 専門家は、理解されず煙たがられる

……と述べました。いったいどうすればいいか、考えてみませんか。


無知ゆえに教員に矛先を向けてしまった残念なTV番組

学校内盗撮

【 番組の流れ 】

  1. 中学3年生のクラスで1月に発覚した複数男子による女子の着替え盗撮事件
  2. 学校は、被害生徒には事件を伝えず、保護者に判断をゆだねた
  3. 学校は、警察に相談し、加害男子を指導後登校させた
  4. 被害女子全員の聴取が必要で、受験直前に子どもを動揺させたくない家庭もあり、学校は警察に処罰を求めなかった
  5. 「一緒に過ごさせるのはおかしい」という親に対し、「学校からは出席停止を強制できないんです」と返答
  6. 出演者は「安全なはずの学校で」「想像の一段二段上を行っていてショック」「いたずらの範疇をとっくに超えている」「学校の対応はおかしい!」
  7. アナは「学校の対応でおかしいのは、①警察に処罰を求めなかった、②加害生徒を出席停止にせず
  8. 上谷弁護士のコメントを引用して説明しているが、都合よく切り抜いている感じ → 🔗盗撮を取り締まる「撮影罪」…上谷さくら弁護士「抑止力になる」と評価
  9. 特に、「義務教育でも素行不良の生徒を出席停止できる制度があるのに、それを利用せず指導により更生させようとしたがる」と説明
  10. 出演者は「加害生徒のためにもしっかりと厳罰しないと。それを学ばせるのも学校だ」「あんなことやっても何もないんだとまちがって周りの生徒に伝わる」
  11. アナは再び上谷弁護士の「身体的被害に比べ盗撮被害は軽視される」を引用し、学校のいたらなさを強調

テレビスタジオ

 元中学校教員のハダノとしては、「天下のNHKでもこの程度か」とガッカリです。

【 ハダノのひとりごと 】

  1. 学校がスマホ持ち込みを禁止しているのを破った結果なのに学校が悪いのでしょうか。タブレットの取り扱いも慎重にならざるをえません。
  2. 受験直前なのでこうするしかないでしょう。上谷弁護士も「被害者の負担を考えると理解できる」とコメントしています。
  3. 教育委員会にも報告し、このような措置になるはずです。
  4. 警察が被害届を受理しなければ捜査は始まりません。少年事件には教育的配慮が必要で、少年の健全な育成のため、警察も学校との連携と適切な役割分担が求められています(少年警察活動規則第5条)。
  5. 高校の謹慎処分や停学処分と混同していますね。小中学校では、懲戒処分としての出席停止を行うことはできません。「性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童」について、学校が最大限の努力を行っても解決できなかった場合にのみ、教育委員会が保護者に命じます(学校教育法第35条)。あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由および期間を記載した文書を交付しなければならないなど、さまざまな法的な手続きが必要となります。加害生徒の学びも保障しなければならず、おいそれとはいきません。
  6. 「安全を維持するのに教員がどれだけ苦労しているか」「次々と発生する問題に教員がどれだけ振り回されているか」知らないでしょうよ。守秘義務があるので具体的なことは言えないんです。
  7. 「教員は教育者だ」というのを完全に忘れています。加害者も被害者も大事な生徒です。教員にできるのは指導だけです。それ以上を求めるのなら、相当の人員を配置してください。
  8. 弁護士なら教育関係法規にも精通しているはず。監修のもとで作られた番組とはとても思えません。
  9. ちょっと調べればわかるのに誤解したまま突っ走っています。出席停止は、指導による更生が不可能なときの最終手段なので、全国で年間1桁の件数に留まっています(2018~2022年度)。教育委員会の判断は妥当だし、教員は職責を果たしていると思います。→ 🔗「出席停止」とは?【知っておきたい教育用語】
  10. 出席停止を謹慎・停学などの懲戒処分と勘違いしているし、処分すれば懲りるぐらいに考えているのでは。教員ができる懲戒は、「注意、叱責、居残り、別室指導、起立、宿題、清掃、学校当番の割り当て、文書指導など」であり、最大限やっているはず。周りの生徒に漏らしたら訴えられるでしょ。
  11. 上谷弁護士が言っていることは正しいでしょうが、盗撮被害を重視しても「指導」は変わりません。番組テーマを際立たせるために教員を一方的に悪者にするのはいかがなものでしょうか。🔗「先生の働き方」を特集したときの「NHKあさイチ」2024年3月7日 と同じ番組とは思えません。生放送なんだから、構成作家・放送作家が書いたシナリオを事前に複数の専門家にチェックしてもらわないと、「情報番組」失格です。
専門家に依頼するときは理解に努めることが大切

生徒として見てきた学校は別物

 「学校教育」について、知識ゼロの大人はいません。みんな少なくとも義務教育は受けているからです。でも、生徒として見た学校と教員として見る学校は別物です。

 幼いころから教員志望だったハダノでさえ、そのギャップに驚かされました。学校は教育機関のはずなのに、教育以外の様々な役割を求められます。教員がしなくてもいい雑務を山のように背負わされています。教員は教育関係法規に従い、校長・市教委・県教委・文科省の指示・命令に従わなければなりません。ドラマの教員のように自分の思いで突っ走ることは許されないのです。

 生徒間でトラブルが起きたときは、どちらの側に立つこともできません。どの生徒の権利も尊重する必要があります。義務教育では、学ぶ権利は絶対です。

中学校のクラス

 保護者は、我が子可愛さのあまり、バランスを欠いた要求をしがちです。教育委員会の指示通りに収めようとすると、「事なかれ主義ですか」「なぜうちの子を助けてくれないんですか」「教育委員会に訴えてやる」となることもあります。

 教員は、「この件でわかったことは……、今後の課題は……」とトラブルを教材化して生徒集団を前進させようとします。守秘義務のため、説明責任を果たせないこともたびたびです。保護者が教員を信頼し、長い目で見てくれてこそ、教育効果があるのです。「教育のプロなら何とかしろ」と丸投げするのは、あまりにも酷です。

 難しい年ごろの子どもが何十人も家にいたら……と想像してみてください。


教職に理解を

 教員の仕事は、職務範囲が不明瞭で非定型なものが多く(特に教頭)、多忙にならざるをえない状況です。授業にしても行事にしても毎回違うことをします。どんなに経験年数を重ねてもいつでも「初舞台」です。


 毎日の業務なら習熟できますが、一時期だけのものはそうはいきません。プールは学校によって管理方法がバラバラなので、なおさらです。

 ハダノが県都から現在の市へ異動した最初の年のことです。体育教員入院のため、水泳指導とプール管理を職員が輪番で行うことになりました。ハダノの当番の日、「元栓を閉めたか」帰宅後に不安になり、学校へ戻りました。暗く雨も降っていたため、グラウンド入口の車止めチェーンに気づかず転倒したのです。左ひじ複雑骨折で2度の手術入院をしたものの、左手の機能の一部を永久に失いました。

プール管理

 教頭になってからも、プール管理には神経を使いました。消防団の訓練をにらみながら注水量を調節し、水源を共有する近隣家庭が断水しないような綱渡り運用をしたこともあります。本来業務でないことで、ミスをしたからと損害賠償請求を受けるのは理不尽です。民間の専門家に任せるべきでしょう。

 「一律に損害賠償請求を行うことがないよう求める」文科省の通知が出ているにもかかわらず、またも4名が36~45万円ずつ支払う事態となっています(→🔗プールの水大量流出 教員らの過失認め損害額の半額を請求)。残業代もなしに過重労働させられ、慣れない業務でミスしたら40万円払わされるようなブラック職場に、どうして若者が来るでしょうか。


 教員の負担を減らし、本来業務に集中できるようにすべきことは、プール管理以外にも山ほどあります。改善を阻んでいるのが教育予算不足です。

 🔗世界の公的教育費対GDP比率 国別ランキング によれば、日本は 179か国中 121位(2022年)です。これでは、働き方改革も教育改革も絵に描いた餅です。

 教員が教育効果をあげるためには、保護者・地域・国民の理解・協力が欠かせません。ぜひ、もっと教職に理解をお願いします。教員志望の学生が減り、日本の未来が危うくなっているのです。


「デジタルを知らない人材」は、DX推進の阻害要因

によれば、デジタル人材のタイプには

a デジタルを知らない人材

b デジタルを理解している人材

c デジタルを使える人材

d デジタルを生かせる人材

e デジタルを作れる人材

の5種類があり、

DX推進力 = -a + c + d×e

という公式が成り立つそうです。DX推進への貢献度は、bの「デジタルを理解している人材」はゼロで、aの「デジタルを知らない人材」は、マイナス(阻害要因)ということです。具体的な事例をもとに語られていました。

 これは、DXだけでなくいろんな分野の改革に当てはまりそうだと感心しました。



【結論】国民の情報リテラシーを底上げするしかない

 結局、🔗「DX推進パスポートを取得しました」 で述べたことの繰り返しになりますが、スキルの可視化により育成サイクルが回り始めることに期待しましょう。

オープンバッジ公開ページ

 ちょっと調べればわかることさえ、中途半端な知識からくる思い込みでまちがった方向へ引っ張って行ってしまう……5歳児に叱られる日本国民のなんと多いことか。国民の情報リテラシーを底上げするしかありません。

 「若い人はデジタルネイティブだから、パソコンは得意だろう」というのも思い込みです。

は、笑えない現実です。

 ハダノは、教頭時代に技術を2年間教えました。スマホ時代になってPCのある家庭は少なくなり、ファイル・フォルダやキーボードなどの基本操作がほとんどできないことに驚かされました。義務教育段階から情報リテラシー向上に力を入れないとヤバイと思いました。

PCでの情報教育

 しかし、断絶の溝は深く、理解を広げることは容易ではありません。ヒトとAIの間にも断絶がありますが、

というものも出てきています。疑似言語が「つなぎ役」として使えるという明るい話題です。


 教育DXブログは、教育やDXにまつわる 断絶解消のための「つなぎ役」 をめざします!!



※ 野口さんは「デジタル化の遅れが日本の長期停滞の元凶」「デジタル化を阻む日本社会の構造」「ITを理解しない日本のトップ」と、日本の失敗の本質を明らかにしてくれています。
「惰性・思い込み・既得権」のせいで、使える技術があるのに使われないという説明には、ハダノも激しく同意します。
「大学院でなく小学校卒業を目指せ」を胸に刻んで取り組みたいものです。

教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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