ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

ICTあるある―3「メールで送ったはずなのに」
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ICTあるある―3「メールで送ったはずなのに」

🕓 7/23/2022 ↻ 7/31/2022

 「ICT活用で教職員の働き方改革というけれど、忙しすぎて覚える時間がない」という笑えない実態が学校現場にあります。落ち込んでいても仕方ないので、あえて笑い話にしてみたのが「ICTあるある」です。


 今回お届けするのは……

高校にメールで送ったはずなのに返信がないというので、調べてみた件


 文書を送る手段は、郵便、FAX、メールといろいろ選べるようになってきました。LAN用メッセンジャーソフトやモバイルメッセンジャーアプリを使えば、より手軽に送ることができます。

 学校が外部と文書のやりとりをする場合、メールを使うことが多いのですが、管理職以外はあまり機会がありません。校内なら共有フォルダ、市内ならLAN用メッセンジャー等で済むからです。保護者あてのメール配信もたいていは教頭の仕事です。

 中3の学年主任は特別です。高校とのやりとりでメールを使う機会がたくさんあります。何年かぶりにメールを使ったら、ふだん使っているメッセンジャーと勝手が違うと感じるかもしれません。


メールで送ったはずなのに……

前の学校の職員から、SOSの電話がありました。

教員A
教頭先生、高校の体験入学の申し込みをメールで送ったはずなのに、返信がありません。
本当に届いているのでしょうか。

ハダノ
今の教頭先生には相談したの……んー苦手そうだって……
まず、「送信済み」を見てください。

教員A
……ダメです。出てきません。
でも、確かにこのパソコンで文書を作って送信したんですよ。

ハダノ
アカウントを間違えてなければ、残っているはずです。
「下書き」を見てください。

教員A
……あっ、ありました。
メールの本文も完成しています。なんで送信されてないんですか。

ハダノ
「送信」ボタンを押し忘れていますね。
すぐ、クリックしましょう。

メーラーデーモンにしかられる

教員A
いつまでたっても「送信済み」に出てきません。
そんなに時間がかかるものなんですか。

ハダノ
「受信トレイ」に英文メールがきていませんか。
メーラーデーモンさんから「こんなメール届けられんぞい」とお叱りのメールが……

教員A
きてます。Mail Delivery Subsystem からです。
アドレス不明 ドメイン*****が見つからなかったため、メールは配信されませんでした……

ハダノ
ハイフン入れ忘れかなんかですね。
もう一回、メールアドレスをよく確認して送信してみてください。

ミスの原因は?

 結局、「送信ボタン押し忘れ」と「メールアドレス打ち間違い」という2つのミスが重なっていました。

 🔗ネットワーク分離のせい(ICTあるある―1より)で述べたように、2016年以降インターネット接続可のPCで校務をほとんどしなくなったことが最大の原因です。メッセンジャーに慣れてしまうと、電子メールを使うのがおっくうになるかもしれません。もちろん、メールぐらいできるようになった方がいいとは思います。

 また、高校側の連絡手段や書式がバラバラなのも困りものです。FAXあり、メールあり、フォーム送信あり、添付ファイルもワード・エクセル・PDFとさまざまで書式もそれぞれ異なるという具合です。いろんな高校に送っているうちにミスがでてもおかしくありません。せめて、県立高校は統一してほしいところです。


中小企業もFAXをやめられない

 学校だけでなく中小企業も困っているようです。🔗約8割の中小企業が受発注にFAXを使用 DXが急務な中でもやめられないワケ(ITmediaビジネスオンライン) によると、

  1. 中小企業は、役所とのやりとりが多い。役所は、持参・郵送・FAXが中心で、サイバー攻撃対策として外部のネットワークに接続しないところもある。
  2. 中小企業は、業務マニュアルがなく仕事の進め方が属人的になりがち。個人のメールアドレスがない場合もある。
  3. 相手がPCを持っていなくてもFAXで送れば確認でき、印刷の手間もない。

ということからFAXが使われ続けているようです。

 1.は、学校でも同じ状態です。市役所関係は、メールOKの場合もありましたが、県関係はFAXのみの指定が多かったと思います。

 2.は、非正規の教員のメールアドレスは年度ごとに県に申請をしなければならず、教頭によって差が生まれていました。情報共有をどれだけやるかで、その学校の組織としての力が決まると思います。また、「教員が生徒や保護者とメールのやりとりをすると、セクハラや不適切な関係に発展する」として禁止されているのも学校特有の問題です。学習指導以外にさまざまな業務を抱え、コンタクトを密にする必要に迫られているのに、電話かプリントのみです。メールが使えれば時間短縮できます。

 3.は、ペーパーレスを本気で推進しないとよくなりません。教育課程の印刷・製本を提出分と保管分だけにするところから始めるとよいと思います。職員・生徒・保護者へのアンケートは、Forms で作ってメールで送れば、簡単に回答・集計できるので便利です。なぜ使わないのか不思議でなりません。


進路選択

そもそもキャリア教育は

 進路指導はいつの間にか理念や目標がすっ飛んで、多くの中学校でどこの高校を受験・合格させるかといった出口指導になりました。だから子どもは小学校から高校まで1万2千時間も学校で過ごしているのに、「将来の生き方や自分に向いた仕事がわからない」と言います。

 そこで、もう一度原点に戻るために、「キャリア教育」という新しい概念が打ち出されたようです。小学校1年生から学校教育の中心的な指導として、進路や職業について理解させ、将来の生き方や仕事の選択能力を育てようというねらいが込められています。

 社会の変化の速さにキャリア教育が追いついているかといえば、疑問です。また、中学校だけで完結するはずはなく、小・中・高一貫してキャリア教育を進めていく必要があります。さらに、大学、企業へとつながっていってほしいものです。


 今の就活でもっとも重視されるのが「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)です。しかし、コロナ禍でサークル活動もアルバイトも満足にできず、「ガクチカに書くことがない!」というのが、就活生の悩みです。そんな中、採用選考でもっと学業を重視しようという動きが出てきました。 → 🔗ガクチカに「学業」ってあり? コロナ禍で重視する企業続々(朝日学情ナビ)

 「何だ、この逆立ちした状況は!」と怒り、驚いたのは、ハダノだけではないでしょう。学業に力を入れた学生が正当に評価されない社会でよいはずがありません。一所懸命教育して送り出しても、社会に生かされないのではむなしくなります。もっと社会を知り・つながり・変えていくということを意識してキャリア教育を進めたいものです。



※ 日本独特のメンバーシップ型雇用システムの問題点をジョブ型雇用との対比からわかりやすく解説した本です。
生徒を入学時の偏差値による就社競争に駆り立て、実業を見下してきた日本の教育界の姿にハダノも反省させられました。


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教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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