ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ
田舎の学校では、夏場は草との戦いに明け暮れます。「きつい・けたたましい・危険な」エンジン式草刈機のかわりに、充電式草刈機で挑んでみました。テクノロジー活用の成果をご覧ください。
環境教育においては、「人類の文明が地球環境を破壊した。緑豊かな自然を回復させるために個人の権利を制限すべき」という環境ファシズム的な考えが垣間見られます。
ハダノは2003年度、ある研究集会の理科教育分科会でレポート発表をしました。「環境教育の視点を取り入れた授業を通して正しい物質観・自然観を育てたい」という思いから、「2年第2分野:血液のはたらきを調べよう」のメダカの尾の毛細血管の観察の改良に取り組みました。教科書の方法では、メダカを密封したビニル袋内の環境が悪化し、メダカが弱ります。メダカの生命維持装置を開発し、手動で水を循環させることで解決し、生徒は集中して長時間観察できました。
県代表に選ばれ、全国大会に参加したのですが、助言者の方々からは酷評されました。メダカの生命維持装置がペットボトルで作られているのが、お気に召さなかったようです。協議のテーブルに置かれたペットボトル飲料やPCも「環境負荷が高いから利用したくないが、仕方なく…」とおっしゃっていて、思わずのけぞりました。「この会場へは、かごか馬でお越しですか」とつっこみたくなりました。
休憩時間に生命維持装置による観察を実演したところ、人だかりができ質問攻めにあいました。「使い終わったペットボトルの再利用」さえ否定する環境ファシズムは脅威ですが、毒されていない参加者もたくさんいたのが救いでした。
都会から来た人は、「自然が豊かで、空気がおいしい」と簡単に言ってくれます。もし、自然のままにしていたらどうなるでしょうか。
1年たたないうちに、草でおおいつくされます。人が住んでいたところとは思えません。
エコロジー(生態学)を学べば、「田舎は植物との種間競争の場」であると気づきます。ヒトと植物が生息域を奪い合っているのです。「自然を大切に」「緑を増やそう」なんてことを言っていたら、暮らしていけません。車窓から見える美しい景観は、人々が日々草刈をして作っているのです。草ぼうぼうの道は、通ることさえ危険です。田舎暮らしの経験がなければ、想像できないかもしれません。
除草にはいろんな手段があります。除草剤は、人体に有害なので学校には適しません。草むしりや鎌での草刈は、低能率です。芝刈り機のような自走式草刈機は、平坦な場所でしか使えません。一般的に使われるのは、刈払機(ビーバー)とも呼ばれるエンジン式草刈機です。
1995年、県庁所在地から田舎に勤務拠点を移したハダノは、「PCなんかよりビーバーを使える者が重宝される」と感じました。しかし、着任2か月後に公務災害で左腕を複雑骨折し、主要な機能を失いました。そのため、ビーバーの練習はあきらめました。
教頭になると、学校の施設管理として草刈が必要になります。「用務員さんがいるのでは?」と思われがちですが、小さい学校にはつきません。PTA美化作業という名の草刈が年1~3回はいっている学校が多いようです。とても助かりますが、すぐに草は伸びます。草刈のたいへんな学校には、業者による草刈の予算がついています。せいぜい年2回で、焼け石に水です。
男性管理職が(男性教諭にも手伝ってもらい)、草刈に励むのが田舎の学校の日常です。しかし、エンジン式草刈機は、ハダノの手に負えるものではありません。1時間作業しただけで手がガクガクし、数時間はブルブルが止まりません。特に左腕はすぐに悲鳴をあげます。何とかしなければと思いました。
自動車の世界では、バッテリー性能の向上に伴い、電気自動車への移行が進んでいます。ハダノは、「そうだ、充電式草刈機を買おう」と思い立ち、2019年度から 🔗マキタ MUR185UD を使うようになりました。付属のチップソー(金属刃)をはずして、🔗プラスチックの3枚刃(A-68323)をつけています。
「きつい・けたたましい・危険な」エンジン式草刈機の3K問題はどの程度解消されたのでしょうか?
このように、エンジン式草刈機の3K問題はほとんど解消されました。では、実際の作業例を見てみましょう。
6月と7月の2か月間放置しただけで伸びてしまった草を、刈りました。
教室と同じ10m四方を刈るのに20分、1時間でバッテリーが切れました。障害物のない平坦な場所ならばもっと短時間で済みます。
「楽らくモード」にすれば、草の密度に応じて回転数が自動調整されるので、効率よく刈れます。充電式ならではの便利機能です。
燃料(ガソリンと潤滑油の混合油)を買わなくていいのは助かります。バッテリーの充電費用は微々たるものです。
バッテリー残量は4段階で表示されます。作業中でもボタンを押せば確認できます。
付属の充電器(DC18RF)にセットすると、残量半分なら30分でフル充電完了し、「エリーゼのために」で知らせてくれます。空になっても1時間足らずで充電できます。
予備バッテリ2個を購入し、3個でローテーションすれば、無限に作業できます。人間の方が先にエネルギーが切れるでしょう。
プラスチック刃のベースへの取り付けは簡単で、ワンタッチで交換できます。3時間作業すると先の方がすり減って切れが悪くなります。3本300円ぐらいです。竹など硬いものは切れませんが、安全性にはかえられません。ナイロンコードよりはよく切れ、バッテリーも持ちます。
少子高齢化に伴い、草刈機を扱える人の数が減少しています。PTA美化作業でも草刈機の台数が減っています。女性管理職が増えてくると、日ごろの草刈をどうするか心配になります。
しかし、充電式草刈機があれば、ハダノのような腕力のない者も草と戦えます。
「米作りなどの農業体験を生徒にさせたいが、草刈が苦になって踏み切れない…」ということがなくなるかもしれません。環境問題やまちづくりをテーマにしたSTEAM教育に取り組む場合、「草との戦い」に目をつぶっていては、オーセンティックな学習にはならないでしょう。
かつて栄えた文明も放置されれば廃墟となる……そんなラピュタさながらのスポットが全国にあります。ページトップの写真は明治・大正時代の発電所跡です。遊歩道はきれいに除草されていますが、それでもこれだけ緑に覆われています。「自然を愛する」とはどうすることなのか、じっくり考えてみたいものです。