ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

田舎では植物しか勝たん
働き方改革教師のバトン科学先端技術STEAM教育

田舎では植物しか勝たん

🕓 8/15/2022 ↻ 9/3/2022

 田舎の学校では、夏場は草との戦いに明け暮れます。「きつい・けたたましい・危険な」エンジン式草刈機のかわりに、充電式草刈機で挑んでみました。テクノロジー活用の成果をご覧ください。


環境ファシズムに毒される環境教育

 環境教育においては、「人類の文明が地球環境を破壊した。緑豊かな自然を回復させるために個人の権利を制限すべき」という環境ファシズム的な考えが垣間見られます。

 ハダノは2003年度、ある研究集会の理科教育分科会でレポート発表をしました。「環境教育の視点を取り入れた授業を通して正しい物質観・自然観を育てたい」という思いから、「2年第2分野:血液のはたらきを調べよう」のメダカの尾の毛細血管の観察の改良に取り組みました。教科書の方法では、メダカを密封したビニル袋内の環境が悪化し、メダカが弱ります。メダカの生命維持装置を開発し、手動で水を循環させることで解決し、生徒は集中して長時間観察できました。

メダカの生命維持装置

 県代表に選ばれ、全国大会に参加したのですが、助言者の方々からは酷評されました。メダカの生命維持装置がペットボトルで作られているのが、お気に召さなかったようです。協議のテーブルに置かれたペットボトル飲料やPCも「環境負荷が高いから利用したくないが、仕方なく…」とおっしゃっていて、思わずのけぞりました。「この会場へは、かごか馬でお越しですか」とつっこみたくなりました。

 休憩時間に生命維持装置による観察を実演したところ、人だかりができ質問攻めにあいました。「使い終わったペットボトルの再利用」さえ否定する環境ファシズムは脅威ですが、毒されていない参加者もたくさんいたのが救いでした。

田舎は植物との種間競争の場

 都会から来た人は、「自然が豊かで、空気がおいしい」と簡単に言ってくれます。もし、自然のままにしていたらどうなるでしょうか。

空き家

 1年たたないうちに、草でおおいつくされます。人が住んでいたところとは思えません。

 エコロジー(生態学)を学べば、「田舎は植物との種間競争の場」であると気づきます。ヒトと植物が生息域を奪い合っているのです。「自然を大切に」「緑を増やそう」なんてことを言っていたら、暮らしていけません。車窓から見える美しい景観は、人々が日々草刈をして作っているのです。草ぼうぼうの道は、通ることさえ危険です。田舎暮らしの経験がなければ、想像できないかもしれません。


主役はエンジン式草刈機

 除草にはいろんな手段があります。除草剤は、人体に有害なので学校には適しません。草むしりや鎌での草刈は、低能率です。芝刈り機のような自走式草刈機は、平坦な場所でしか使えません。一般的に使われるのは、刈払機(ビーバー)とも呼ばれるエンジン式草刈機です。

 1995年、県庁所在地から田舎に勤務拠点を移したハダノは、「PCなんかよりビーバーを使える者が重宝される」と感じました。しかし、着任2か月後に公務災害で左腕を複雑骨折し、主要な機能を失いました。そのため、ビーバーの練習はあきらめました。

男性管理職は草刈が必須科目

 教頭になると、学校の施設管理として草刈が必要になります。「用務員さんがいるのでは?」と思われがちですが、小さい学校にはつきません。PTA美化作業という名の草刈が年1~3回はいっている学校が多いようです。とても助かりますが、すぐに草は伸びます。草刈のたいへんな学校には、業者による草刈の予算がついています。せいぜい年2回で、焼け石に水です。

 男性管理職が(男性教諭にも手伝ってもらい)、草刈に励むのが田舎の学校の日常です。しかし、エンジン式草刈機は、ハダノの手に負えるものではありません。1時間作業しただけで手がガクガクし、数時間はブルブルが止まりません。特に左腕はすぐに悲鳴をあげます。何とかしなければと思いました。


充電式草刈機に乗り換えてみた

 自動車の世界では、バッテリー性能の向上に伴い、電気自動車への移行が進んでいます。ハダノは、「そうだ、充電式草刈機を買おう」と思い立ち、2019年度から 🔗マキタ MUR185UD を使うようになりました。付属のチップソー(金属刃)をはずして、🔗プラスチックの3枚刃(A-68323)をつけています。

 「きつい・けたたましい・危険な」エンジン式草刈機の3K問題はどの程度解消されたのでしょうか?

草刈機

きつい → 楽ちん

  • 重量が半分の3kgになった。
  • 長さは同じ。重心がエンジン側から中央寄りになり、取り回しやすくなった。
  • ひもを何度も強く引いてエンジンをかける必要がなくなった。
  • エンジンからの熱発生がなくなった。夏は助かる。

けたたましい → 静か

  • エンジン音がけたたましくて授業中の作業は気が引けていたが、気づかれずに作業できるようになった。
  • 腕にダメージを与えていた振動もほぼなくなった。騒音と振動がないと、疲労感も軽減される。

危険な → 安全な

  • チップソーと違ってプラスチック刃は、キックバック(障害物に当たった反動で跳ね返ること)が起きにくく腕を取られにくい。
  • 万一、人体に接触してもケガをしにくい。
  • 草がからまると自動停止し、逆回転ボタンでほどくことができる。

充電式草刈機での作業例

 このように、エンジン式草刈機の3K問題はほとんど解消されました。では、実際の作業例を見てみましょう。

充電式草刈機での作業例

 6月と7月の2か月間放置しただけで伸びてしまった草を、刈りました。

 教室と同じ10m四方を刈るのに20分、1時間でバッテリーが切れました。障害物のない平坦な場所ならばもっと短時間で済みます。

 「楽らくモード」にすれば、草の密度に応じて回転数が自動調整されるので、効率よく刈れます。充電式ならではの便利機能です。

ランニングコストもいい感じ

 燃料(ガソリンと潤滑油の混合油)を買わなくていいのは助かります。バッテリーの充電費用は微々たるものです。

DC18RFで充電

 バッテリー残量は4段階で表示されます。作業中でもボタンを押せば確認できます。

 付属の充電器(DC18RF)にセットすると、残量半分なら30分でフル充電完了し、「エリーゼのために」で知らせてくれます。空になっても1時間足らずで充電できます。

 予備バッテリ2個を購入し、3個でローテーションすれば、無限に作業できます。人間の方が先にエネルギーが切れるでしょう。

DC18RFで充電

 プラスチック刃のベースへの取り付けは簡単で、ワンタッチで交換できます。3時間作業すると先の方がすり減って切れが悪くなります。3本300円ぐらいです。竹など硬いものは切れませんが、安全性にはかえられません。ナイロンコードよりはよく切れ、バッテリーも持ちます。


【結論】充電式草刈機があれば、腕力がなくても草と戦える

 少子高齢化に伴い、草刈機を扱える人の数が減少しています。PTA美化作業でも草刈機の台数が減っています。女性管理職が増えてくると、日ごろの草刈をどうするか心配になります。

 しかし、充電式草刈機があれば、ハダノのような腕力のない者も草と戦えます。

 「米作りなどの農業体験を生徒にさせたいが、草刈が苦になって踏み切れない…」ということがなくなるかもしれません。環境問題やまちづくりをテーマにしたSTEAM教育に取り組む場合、「草との戦い」に目をつぶっていては、オーセンティックな学習にはならないでしょう。

 かつて栄えた文明も放置されれば廃墟となる……そんなラピュタさながらのスポットが全国にあります。ページトップの写真は明治・大正時代の発電所跡です。遊歩道はきれいに除草されていますが、それでもこれだけ緑に覆われています。「自然を愛する」とはどうすることなのか、じっくり考えてみたいものです。



※ MUR185UD の後継機種です。充電器とバッテリー1個が付属しています。予備バッテリーも購入するとよいでしょう。


※ マキタ 樹脂刃替刃セット品 A-68345 (12枚入)も購入するとよいでしょう。


次へ→ 田舎では植物しか勝たん2


教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
プライバシーポリシー  |  Copyright © 2022 HADANO