ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

GIGAスクールの難問「低学年iPad問題」を考える
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GIGAスクールの難問「低学年iPad問題」を考える

🕓 7/28/2024 ↻ 8/10/2024

 GIGAスクールはうまくいっていますか? デジタルの進歩についていくのがたいへん、これ以上仕事をふやさないでと悲鳴をあげていませんか?

 そんなあなたと、「未来の教室」について考えていきましょう。未来が子どもにとっても教員にとっても明るいものとなりますように…


低学年児童にも学びの入り口を!

 小学校は、1~6年生という幅広い年数の児童を教育します。高学年児童向けの実践例は少しずつ蓄積されてきました。しかし、それを低学年にそのまま適用することはできません。「低学年iPad問題」はGIGAスクールの難問です。


デジタル育児の問題点

  • 言語発達への影響
  • 生活リズムの乱れ
  • 愛着形成への影響
  • 依存傾向
  • 視力への影響

、、、など、iPadに子守させる「デジタル育児」には問題があります。 → 🔗4歳でiPad中毒も--乳幼児のスマホ・タブレット利用の危険性とは  → 🔗スマホ育児とは?子供への影響は?やめたい?後悔したときの対処法とは?

iPadに子守させる「デジタル育児」

タブレットがPCと違う点

  • 生産より消費に向いている
  • 動画やゲーム漬けになりがち
  • 課金や衝動買いをしがち
  • じっくり腰を据えて取り組みにくい
  • PC経験がないと生産的に使えない

と、ITの専門家も指摘しています。 → 🔗ひろゆきが断言「我が子には絶対にiPadを買い与えるな!」

 特に、OS の違いには要注意です。Windowsタブレット は、手に持って操作できるPCですが、iPadは、でっかいスマホにすぎません。


低学年は抽象概念の理解が困難

  • デジタルの世界は数字とアルファベットでできている
  • ファイルやフォルダの操作には、抽象概念が伴う
  • Webの文章を子ども向けに変換しても意味が理解できない
  • 🔗「インターランドであんぜんなつかいかたをしる」 は難しい
  • 画像は、文章に比べ直感的に理解しやすい
  • デジタルお絵かき(画像処理)は有望だが、使いこなすには抽象概念が伴う
  • ロボットは実体があるが、高価で導入しにくい
  • VRなら直感的体験学習が可能だが、VRゴーグルは13歳未満不可

、、、小学生は、学年による発達段階の差が大きいので、要注意です。 → 🔗【9歳の壁】形式的操作期(ピアジェ)が始まる年齢|抽象概念を理解する年齢

 ハダノには、小学校低学年の担任はとても務まりません。小学校の先生方には頭が下がります。

低学年は抽象概念の理解が困難

日本はデジタル機器を学びに活用しない国だった(2018年)

  • 授業でICT活用しない国ナンバーワン
  • コンピューターを使って宿題をしない国ナンバーワン
  • 「遊び」でデジタル機器を使う国ナンバーワン
  • その反省からGIGAスクールが始まった
  • 日本は、大人も学ばない国ナンバーワン

、、、日本のいちばんの問題はここです。 → 🔗ゲーム&チャットは1位で学習は最下位…日本の15歳のICT活用の実態 | リセマム  → 🔗学ばない国、日本。|島田慎二

 「発展途上国」と見下している国の子どもたちが、デジタル機器を学びに活用してグングン成長しているのを知らないのは、日本人だけかもしれません。「iPadで遊んでばかりで何が悪いの?」にちゃんと答えられる大人がどれだけいるでしょうか。


iPad特有の問題点

、、、については、当ブログでも再三述べてきました。Apple社の囲い込み戦略は、日本で大成功しました。そのため、この問題のおかしさに気づく人は少ないようです。「オシャレで高性能なApple」というブランドイメージに流されてしまうのは、思考停止する方が脳にとっては省エネになるからです。 → 🔗「脳の闇」

 ハダノは、AndroidスマホもWindowsタブレットも持っていますが、それらで普通にできる基本操作が、iPadではできなかったり非常に煩雑だったりして悲しくなります。


 そもそも、タブレット本体は世界中のさまざまなメーカーによって作られているのに、iPadはApple製のみです。ハードウェアもソフトウェアもApple秘密主義のベールに包まれているので、攻撃されにくい利点はあるものの閉鎖的です。

、、、を読むと、Appleとは対照的なGoogleの姿勢がわかります。ブラウザに関して言えば、MicrosoftのEdgeも、オープンなChromiumをベースにしたものに変わりました。AppleのSafariは、セキュリティの高さを売りにしていますが、Apple製品以外では動きません。

閉鎖的システムと対照的なオープンシステム
メーカー〔OS〕本体製造企業 オープン度 
Microsoft〔Windows〕多数
Google〔ChromeOS〕多数
Apple〔iPadOS〕Apple社のみ×

 「異常でも理不尽でも、多数派なら許される」というのはいかがなものかと思います。「ファイルを送りたいなら、AirDropを使えば簡単だよ」などと言えるのは、Apple製品同士に限られます。WindowsもAndroidもChromeOSもAirDropは動作しません。より標準的な方法でファイルを扱います。

 したがって、iPad活用においては、できるだけ標準的な使い方を心がける必要があります。プレゼンなら、AppleのKeynote ではなく、MicrosoftのPowerPoint や Googleスライド を使うべきと考えます。手軽さに惑わされず、データの互換性や将来のことを考えたいものです。


教育より養護を重視してもiPadは不向き

  • 🔗「デジタル育児の問題点」 は深刻に受け止めたい
  • 子どもを守るにはペアレンタルコントロールが必須
  • アプリのインストール制限などで子どもの自由は制限される
  • 子どもが自由に簡単に楽しめる良質なコンテンツは極めて少ない
  • 画用紙・粘土や紙の本の方が、養護(生命の保持と情緒の安定を図る営み)に向いている
  • 子どもにiPadを与えるなら、養護より教育を目的とすべき

、、、児童福祉機関である保育園のように、「まず養護」という場合であっても、iPadは不向きです。 → 🔗保育における養護とは?ねらいや内容を解説


 教員でも、「子どもがかわいそう」という気持ちがつのると、ついつい「養護」に傾いてしまいます。

 行事のねらいで、

  • 〇〇を通して、充実感や達成感を味わわせる
  • 〇〇を通して、学校生活に楽しみを与える

、、、など、子どもを喜ばせるサービス精神が見られることがよくあります。

 「子どもを幸せにしてあげる」よりも「幸せになれる力をつける」ことが大人の役目ではないでしょうか。


「低学年がついていけなくてかわいそう」を解決する知恵

 低学年の活動として有望な「お絵かき」を例にとります。

 インストール不要で使えるWebアプリ「BeFunky」で「ぬりえ」をするとします。

BeFunkyでぬりえをしよう

 活動の説明を文章にすると、、、

  1. おえかきは どこまでも じゆう だ!→ すきな いろでぬろう
  2. ドライブ△アプリ - 👥共有中 - ○○○フォルダ - pool.svg の 三てんリーダ… - アプリで開く - ”ファイル”に保存📁 - このiPad内
  3. BeFunky を開いて、写真編集 - 新規作成。 ※開く- 📱カメラロール - ファイルを選択📁- このiPad内 - pool.svg
  4. 👁️タッチアップ - 🖌️ペイントブラシ でいろをぬる。 ※あかるい いろ からぬっていくとよい ※色のみぎのしかく をタップ - 囲 をタップし、ぬりたい いろ に ちかい いろ をえらんで、囲 をタップ ※◎ を みぎ(こく)、ひだり(うすく)、うえ(あかるく)、した(くらく) へうごかし、いろがきまったら、色のみぎのしかく をタップ ※ノーマル を 乗算 にかえる。いろをぬっても、けしゴムでけしても、くろいせん はそのままのこるので べんり ※不透明度:100% ※強度:100%(かさねぬりのときは、50%) ※ブラシのサイズ:10%(こまかい)~ 20%(ふつう) ~ 30%(ひろい)
  5. さいごに、はみでたところを けしゴムでけしたり、💉スポイトでいろをひろってぬりつぶしたり、こまかくしゅうせいして しあげ、 適用 をタップ。
  6. 保存 - △Google Drive - ファイル名 pool09 などと じぶんのばんごう をつけて ほぞんする。
  7. ドライブ△アプリ - ファイル - マイドライブ - pool??.png の 三てんリーダ… - 📁移動 - 👥共有アイテム - 📁○○○フォルダ - ここに移動 - 移動 で、みんなのフォルダへ うつされる。
  8. 【まとめ】ぬりえ をしてわかったことは?

 できるだけ低学年にわかるように表現しようとしても、限界があります。アプリ自体に使われている漢字は変えようがないし、英語(カタカナ)や数字がずらずら出てきます。数学の「集合」や「論理演算」になじみがないと、大人でも完全には理解できないでしょう。

お絵かきアプリを使う子ども

 異学年交流できれば、高学年に助けてもらうという手があります。お膳立てを高学年がやって、低学年は塗るだけにするのです。

 ハダノの育った地域では、小学生が遊ぶときに低学年だけ特別ルール(つかまっても鬼にならないなど)を適用していました。「一緒に遊ぶとついてこれないから」と低学年を排除するのではなく、特別ルールで参加・体験させるという知恵です。近県で「ままこ」「すぼんこ」「あぶら(むし)」などと呼ばれていたようです。

 考えてみれば、「ボーリングのガーターなしレーン」「自転車の補助輪」「浮き輪」「ままごと」などにも同じ発想が見られます。


低学年iPad問題は難しいが、思考停止せず学びの入口を見つけていきたい

 「低学年に水遊びさせたいだけなのに、なんと面倒くさいことを……」と誤解されているかもしれません。しかしiPadを使うのは、「低学年用プール」ではなく「」です。相当の見通しと準備・指導がなければ、「情報の海」に飲み込まれてしまいます。


、、、などの実践報告を読んでも、解決までの道のりは遠いと感じます。かなり限定された条件で成立する実践だと思うからです。


 それでも、何とか解決の糸口を見つけていきたいものです。

 みなさんの実践例やご意見をお寄せいただければさいわいです。

 → 📨 お問い合わせはこちら までお願いします。



※ 「人は聞きたいことしか聞かないし、話したいことしか関心を持たない」
「言いたいことを言っても真意が伝わることはなく、砂に水をまくようなもの」
「論理的な人は煙たがられる」など、脳に備わる深い闇を解き明かしていて、ハダノは救われました。

教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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