ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ

クラウド統合開発環境でWebアプリの自校運用を
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クラウド統合開発環境でWebアプリの自校運用を

🕓 6/21/2022 ↻ 7/1/2022

 この記事では、「Webアプリの自校運用に最適なクラウド統合開発環境を探し求め、Glitch(グリッチ)から Replit(リプリット)に乗り換えた話」を紹介します。


学校教育にふさわしいのは、Webアプリ

 「コンピュータ、ソフトなければただの箱」です。各校とも自校の機種用のアプリを導入します。教員や教育委員会担当者がソフトウェアにくわしくなければ、業者のいいなりです。多くの場合、ネイティブアプリを有料で導入することになります。アプリ自体は無料であってもインストール手数料を取られます。

ネイティブアプリとWebアプリの違い

  • ネイティブアプリは各OS用に作られたアプリなので、機能・性能をとことん追求できる。OSごとに別々のアプリが必要。開発・登録にお金がかかり、インストールが必要。
  • Webアプリはブラウザ上で動くので、ネットさえあればOK。一つのアプリで汎用的に使えるが、機能・性能はほどほど。お金をかけずに開発でき、インストールは不要。

 このような違いを考えると、予算の乏しい学校ではWebアプリを中心にした方がよいことになります。業者はWebアプリからは利益が得られないので、いい顔はしないと思います。WebアプリはWeb上に配置され、そのアドレスを知っていればだれでも使うことができます。ほとんどの場合、無料です。


Webアプリを自校運用するには

 Webアプリの中には、データを蓄積するタイプもあります。すでにWeb上に配置されているWebアプリの場合、データ領域も無料で使わせてくれることがあります。ただし、容量に制限があったり、保存期間が決まっていたり、秘密が守られなかったり、突然サービスが終了したりします。「容量を気にせず、自在にデータを扱いたい」場合、一般的には自力でサーバーを立てて運用する必要があります。サーバーサイドプログラミングをはじめとする専門知識や費用が必要となり、手が出ません。

 それを解決するのが、🔗Paas(Platform as a Service)やBaas(Backend as a Service)などのクラウドサービスです。無料でもけっこう使えるものがあります。ハダノは、プログラミングにはクラウド統合開発環境、データベースにはFirebaseを使います。これらを使えば、Webアプリを自校運用することができます。大切な教育データを自校で管理できて、安心・便利です。生徒の作品やコードの管理はもちろん、ソックリッカーの先生名の削除も自分でできるのです。

クラウド統合開発環境のおすすめは?

 🔗JavaScriptでいきなり機械学習を遊び倒す本 では、2つのおすすめが紹介されていました。

 Glitch(グリッチ) と Replit(リプリット) です。どちらも似た特徴を持っています。GlitchはJavaScriptに特化、Replitは50以上のプログラミング言語対応です。ハダノはJavaScript主体なので、はじめはGlitchを使っていました。ボタン一つでFirebaseにデプロイできるのもGlitchの魅力でした。

 2022年になって状況が変わってきたので、自分なりにGlitchとReplitの特徴を整理してみました。

GlitchとReplitの比較【GとR】

  • プロジェクト名は、Gは自動でつき、Rは自分で設定する。Rの方がわかりやすい。
  • どちらもしばらくアクセスしないとスリープする。Rは10秒程度で復帰するが、Gは時間がかかることが多い。エラーでリロードすることもしばしば。Rの方がストレスが少ない。
  • Firebase Hostingにデプロイすればスリープしなくなる。Gは以前はボタン一つでデプロイできるのを売りにしていたが、2022年になって画面デザインが変わってボタンが表示されなくなった。GlitchとFirebaseに報告したが、返答なし。TERMINAL欄にShellコマンドを打ち込めばデプロイできるが、きわめて煩雑。同じようにすれば Rでもデプロイできるが、そこまでの必要性を感じない。
  • ファイルやフォルダの扱いは両者で異なる。Gは一つずつしかアップロードできないし、圧縮ファイルや画像ファイルはassetsフォルダにはいる。カレントディレクトリに入れたり、解凍したりするためには、TERMINAL欄に複雑なコマンドを打ち込む必要がある。Rは、ローカルファイルをごそっとドラッグ&ドロップするだけで、フォルダ階層を保ったままアップロードできる。Rの方がファイルの扱いが簡単。 ただ、簡単すぎて生徒が違う階層に移動させてしまうおそれはある。
  • 画像の一覧を見たい場合、Gは、assetsフォルダの一覧表示があって便利。 Rは、画像をimgフォルダなどに入れ、プログラムで一覧表示させるしかない。
  • PREVIEW欄(Output欄)は、両者ともルートのindex.htmlが表示され、コード編集欄とは連動しない。Gはルート以下のパスを打ち込めるが、Rは固定なので新しいウィンドウで開く必要がある。タブレットでの操作などを考えると、別ウィンドウでプレビューする方が現実的なので、GもRも差はない。

……ということで、おおむねReplitの方が使いやすそうです。


Replitに乗り換えよう

 Glitchは、アップデートのたびに使いにくくなり、方向性も微妙にずれてきていると感じます。1年以上使って慣れているという利点を捨ててでも、Replitに乗り換えようと決めました。

 「画像の一覧」の問題が残っていますが、これは何とかなりそうです。画像やクリップボードの扱いが独特な iPad に対応したコードを書くついでに解決します。

 🔗ソックサーガ🔗ソックリッカー のReplitによる自校運用も提案していきます。



※ 最新WebサービスとJavaScript関連の情報を提供してくれる「まさとらん」さんの記事に、ハダノはいつも助けられています。
この本も入口の部分をていねいに教えてくれます。
GlitchとReplitに出会えてよかったと思います。


→ ソックサーガの始め方【自校運用】

→ ソックリッカーの始め方【自校運用】


教育DXブログの著者: ハダノ
ハダノ顔 Q大理学部生物学科数理生物学研究室にて分子進化学権威の宮田隆氏のもとFORTRANでDNA解析に没頭。F社のSEに内定していたが、科学のおもしろさを教えるため中学校理科教員を選択。
 新任のころから、「答えのない問題を追求させたい」「団結力と文化的な力を集団づくりで」「教育研究をもっと科学的に」「教育の情報化が必要」「チョーク&トークの注入式授業からアクティブラーニングへ」「教科横断的なSTEAM教育で生涯学習・SDGsへ」という思いを持ちつつ、4市10校にて勤務。
 9年間の教頭時代、さまざまな不条理・矛盾に悩み、ICTによる働き方改革を推進。2021年3月定年退職。「特定の学校だけでなく、広く人材育成を」「日本陥没をDXで食い止めたい」「元教員の自分にできることを」と、教育DX研究の道へ。
 おおいたAIテクノロジーセンター会員。デジタル人材育成学会・日本STEM教育学会・日本情報教育学会・データサイエンティスト協会・日本RPA協会の会員。JDLA G検定 2022 #1 合格者。
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