ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ
「教職員の働き方改革」が社会問題となって久しいのですが、「なぜ解決しないのか」「管理職はどう考えているのか」と気になりませんか?
この記事では、教頭の目で見た現場のリアルを紹介します。
2018年2月文科省より各教育委員会へ 「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに 学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について (通知)」が出されてから、教頭たちがどう悪戦苦闘したかわかると思います。
※市教頭会による教職員勤務時間管理の取組を県教頭会2018で発表しました。原文に準拠して掲載します。
「小中連携・地域との連携で盛りだくさんの取組をし,学びに向かう子どもに育っている。ただ,先生方が働き過ぎで倒れてしまわないか心配…」〇〇学校運営協議会の席上,委員の方々から出された言葉であった。
学校現場のブラック化が社会問題として取り上げられるようになってきた。「子どものために長時間頑張ること」が美徳とされ,病休者を生み出し続けている。伝統・前例だからと思考停止せず,どんな資質・能力を育てるのかという共有ビジョンをもとに,業務を精選・効率化する必要がある。
ゆとりがなければ,自己研鑽はできず,人材育成もままならない。身近な職業人として夢を与えられるかというキャリア教育の面からも教職員の働き方改革が急務と考え,本主題を設定した。
教職員の人材育成・自己研鑽のための働き方改革はどうあればよいか,教頭としてどう取り組めばよいかを明らかにする。
平成29年度,定例教頭会で働き方改革を検討し続けた。市教委の働き方改革プランの中で,まず勤務時間の可視化に教頭会として取り組むこととなった。
平成30年度,勤務時間調査強化月間へ向けて,状況を共有しながら取り組んだ。
7月~9月の第4回~6回定例教頭会の中で,働き方改革について検討した。ノーリターン運動(出張した職員を学校に戻らせない),第1金曜17時閉庁,お盆閉庁,メール配信システム加入状況などについて話し合った。それらが取り入れられた形で,12月上旬に「市教職員働き方改革プラン2018案」が市教委から示された。
12月14日第8回定例教頭会で,これについて話し合った。勤務時間把握については,全国的に有名なK町のシステムを借りるということで,さまざまな意見が出された。「25名までしか欄がないが,大きな学校はどうするのか」「各人が毎日朝と帰りにクリックするのを忘れないよう教頭が指導しないと」「毎朝データをリセットするのは教頭か」「簡単に他人のデータが見えてしまうのは問題」など,慎重論が大勢を占めていた。市教委の担当者は,「本市に合ったものにするために,ICTに長けた教頭に相談しながら進めたい」と述べた。
プラン2018案については,各校で検討し,具体的取組など提案型の意見集約をすることになった。
12月22日の〇〇中学校職員会議では,プラン2018案に対して活発な意見交換がなされた。定時退庁拡大・お盆閉庁については,「業務の総量が多いままだと,持ち帰りや休日出勤に変わるだけ」「各校1名出席の会議が多すぎ,小規模校はたいへん。夏休みに限らず研修の見直しを」という声が多かった。勤務時間把握については,ストレスチェックのため以前から本校共有フォルダで稼働中の「勤務時間取得ツール」の方が簡単なので,そちらを市教委へ提案しようということになった。 1月17日,本校案採用を前提に市教委の担当者が来校した。
という利点を生かし,市内全小中学校で動かすためのシステム仕様を詰めていった。
1月29日第9回定例教頭会で,「勤務時間取得ツール」を核とする勤務時間システムの概要を発表した。元々個人が使うツールを学校全体で使い,管理職が残業時間集計できるようにするには,運用上どうしても負担が生じる。各職員の操作を軽くすると,各校の管理者に煩雑さを強いてしまう。迷いながら勤務管理者マニュアル案を提案した。結局,教頭が勤務管理者となって取り組むことを教頭会として受諾し,2月中旬から試行,改良を加えて翌年度から本格実施することとなった。
システムの開発においては,標準的な技術のみを使用するよう心がけた。それにより,日常業務とのつながりが深くかつ無料のシステムとなる。各職員の負担を減らすために,個人フォルダ自動生成・目立つアイコン・アニメ入りヘルプファイルなど工夫を凝らした。
2月14日,市の教頭会フォルダで試作版を配布した。その後,質問・要望を開発担当として受けながら改良を重ねていった。
4月1日臨時教頭会で,勤務管理の取組を振り返り,年度替わりの設定作業の確認を行った。教頭の異動が多く,困難が予想された。そこへ,新たに在宅勤務・部活動時間の把握の要請の話が舞い込んできた。
現システムは,残業時間のみを集計する仕様になっているため,手書きで対応するしかないと思われた。しかし,それではこれまでの教頭会の努力が無駄になってしまう。そこで,開発担当として,現システムを生かした形での運用を市教委へ提案した。強化月間の6月だけ備考欄に在宅勤務・部活動時間を入力することで合意し,勤務時間システムの改訂に取りかかった。
5月6日に改訂版を配布し,不安な管理者対象の説明会を5月11日に持つことになった。現システムを運用できずに新システムを動かすのは無理なので,システム稼働調査をGoogleスプレッドシートで行った。多忙化対策推進役の教頭自身が忙殺されている実態が明らかになった。
スプレッドシートで各校の状況を共有し,情報交換を行ううち,勤務管理者のICTスキル格差が問題になった。ファイルコピーを補助するツールを導入したり,近隣の教頭や事務職員が支援したりすることで前進が見られた。勤務管理の目的や業務改善への生かし方についても議論が巻き起こり,
が生産性向上に有効であろうとなった。
勤務時間システムは①と③を助けるが,さらに①と②を補助するタイマーソフトも討論の中から生み出された。
市教頭会として勤務管理に取り組んだことにより,市内全域で勤務時間の可視化・勤務時間把握の自動化が実現した。各校で勤務の振り返りができた。
業務を時間データ分析と共有ビジョンをもとに精選・効率化することで,生産性向上(職能成長)を果たし,生じたゆとりを自己研鑽・人材育成につなげていきたい。
働き方改革における教頭の役割は何か。
※ 当日の協議のようすは、次の記事で → 🔗教職員の人材育成・自己研鑽のための働き方改革―2