ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ
「今年の文化祭、コロナ禍で制限多いけど、何をしようか?」
「いじめ対策・人権教育、学校全体で取り組むにはどうしたら?」
「創意工夫は大事だけど、働き方改革に逆行しないかな?」
そんなあなたに、全校ぬりえの取組を紹介します。ぬりえ自動化システム「ヌルパ」が誕生したいきさつがわかるでしょう。きっと何らかのヒントが得られると思います。
※2020年度■■地区解放文化祭がコロナ禍で紙上開催となったときのレポートです。原文に準拠して掲載します。
本校では例年文化祭での人権劇や全校の弁論大会等をしているが,今年度は新型コロナウイルス感染防止のため,実施できなかった。
しかし,そのような状況の中でも子どもたちに「部落解放を担う豊かな感性と表現力」を養っていくため,今年度本校が特に力を入れたのが,①「協働的課題解決力」を育成する「全校集団づくり」を目的とした「全校ぬりえ」,②「互いを認め,支え合う集団づくり」をめざした生徒会活動である。
また,これと併せて,授業における「互いを認め,支え合う集団づくり」に関わる取り組みを紹介する。
密を避けた文化祭を実施するにあたって劇や合唱ができない状況の中,それらの代わりとして「全校生徒によるステージ画作成」を行った。
ねらいとして
ということが挙げられる。
2020年度●●中学校文化祭テーマである,「YELL~感謝・希望・笑顔~」(9/23決定)に合った原画の作成をした。
紅葉の背景画像,どこまでも伸びていく木の画像,YELLを表すメガホンの写真,体育大会全校種目「集団行動」の写真,文化祭の発表に向けて練習したリコーダーの写真等を合成して,1枚の画像にした。
※ 原画を線画に変換(ベクトル化)しやすくする
※ P2VJ でposterizeオンにして,svgファイルに変換。輪郭線を灰色で表示するためにmeryで stroke:none を stroke:gray にすべて置換。最初の方にある <g>
を<g fill-opacity="1" stroke-opacity="0.5">
と打ち換えて,完成画svg。塗色を透明にするために fill-opacity="0"
と変えて,ぬりえsvg。svgを🔗Inkscape で読み込み,解像度を3.3倍にしてpng画像にエクスポート。
※ pngを PosteRazor で読み込み,分割印刷用のpdfを出力し,pdf_asでページ番号を付加。Acrobat Reader DC で,印刷。個人手本は,横9枚×縦4枚に分割。ぬりえは,A3用紙(余白上10mm 下10mm 左15mm 右12mm 右下重なり10mmずつ 左上寄せ)横18枚×縦8枚に分割。
以上のことは,すべてフリーソフトでだれでもできるが,nuRpa(ヌルパ)というRPAシステムを使うと,自動化できる。ダブルクリックするだけで原画をぬりえにすることができる。
赤・青・黄の3色のうち,2色を混ぜて同じ色合いの色を作る。色合いを合わせたら,黒か白を混ぜて明るさを合わせる。色合いは多少ずれてもよいが,明るさは立体感に関わるので,厳密に調整。
◆指導した3年生の感想
1年生に色ぬり指導をしてみて,教えることの難しさを知りました。最初に全体に向かって説明したのに,いざ作業にはいると,「ここはどうするの」といちいち聞いてきました。「少しは自分の頭で考えんかい!」と言いたくなるのをこらえて,粘り強く指導しました。へとへとになりました。
先生方には,「いちいち質問してうっとおしかったでしょうね。今までごめんなさい」という気持ちでいっぱいになりました。
一人A3用紙4枚分の色ぬり。ぬりえなので形は保証され,色づくりで個性を発揮。込み入った絵柄の部分は,なかなか進まず,他の生徒が加勢することも。何とか10月中にほぼ完了。
以下の手順で行った。生徒会執行部の9名で分担しながら取り組み,11月14日の文化祭当日には余裕をもって完成できた。
完成!!
今年度の●●中学校生徒会のスローガンは「THE BEST」である。このスローガンには困っている人を助けたり,支えたりすることのできる生徒会にしたいという思いや,まず率先して自分たちから行動しがんばることのできる生徒会にしようという意味が込められており,生徒は「互いを認め,支え合う集団」をめざして生徒会活動を行っている。
毎朝,全校生徒が廊下に並んで校歌を歌う活動がある。朝から校歌を全校で歌うことによって,その日を活力ある一日にしようと5年前から行っている取り組みである。校歌を歌い終わった後は,本部役員が全校の前に出てきてその日,どんなことに頑張るのかなどを声かけし,その言葉に全校で大きな声で「はいっ」と応えることから●●中学校の一日が始まる。
生徒たちからは,「朝,大きな声で校歌を歌うことによってその日一日を頑張ろうと思うことができる」や「生徒会本部からの声かけによって,その日の自分の目標を意識することができる」といった感想が出ており,生徒会の一連の朝の活動は,生徒たちが自分たちで意欲を高めるのに効果があると実感している。(現在はコロナ感染防止の観点から一旦中止)
「互いを認め,支え合う集団」をめざし各専門部で様々な取り組みを行っている。
保体部では「誕生日集会」と「ハッピーマッチ」がある。誕生日集会は生まれ月ごとに該当生徒の誕生日を全校でお祝いする活動である。生徒の名前の由来を紹介したり他の生徒がお祝いのカードを書いてプレゼントしたり,全員でハッピーバースデイの歌を歌ってあげたりする。お祝いされる生徒たちは照れくさい表情をうかべるものの,とてもうれしいと感じているようだ。「ハッピーマッチ」は,スポーツを全校で行うことで同学年はもちろん,他学年とも親睦を深め,絆を深めることに役立っている。
環境部では,清掃を学年をといた縦割り班で取り組んでいる。清掃の始めと終わりにあいさつをすること,時間いっぱい丁寧に取り組むこと等を,先輩から後輩へと引き継いでいくことをめざしている。
生徒会本部の呼びかけによって,ペットボトル蓋の回収を全校生徒で行っている。2019年7月には157.5㎏を回収し,39人分のワクチンにかえることができた。生徒は自分たちの地道な活動が世界で困っている人のためになっていることを実感し,人を助ける活動の大切さを学ぶことができている。
●●中学校生徒会では,いじめは絶対にしない,見逃さないとして以下のような宣言文を2013年10月に決定した。それから毎年,生徒総会時に確認をし,全ての活動の根底にこの思いを持って活動するようにしている。
授業では〈人権尊重の3視点〉として,自己選択・決定の場の設定により自分の考えを持たせ,考えを交流することで自己存在感を持たせる支援や共感的関係を育成する支援をしている。年に一度,互見授業で教員同士で授業を参観し合い,指導力の向上に努めている。
今回はその中より,2名の教員の授業の指導案と互見授業観察シートより,「互いを認め,支え合う集団づくり」について紹介する。
「全校ぬりえ」では密にならず,一人一人が個別に作業できる点が安心だった。また,単純作業のドット絵ではなく塗り絵であることで,一筋縄ではいかず,お手本通りの色を調合しようと苦心していた。文化的な力の高まりや子ども達の個性の発揮を感じることができた。
3年生が色塗りの仕方を1年生に指導したり,得意な子どもが苦戦している仲間のぬりえを手伝ったりと,互いに支え合って作業することができた。完成した作品が文化祭開会式で序幕されたときには,「全校生徒で一つの作品を創り上げることができた」という充実感で会場は満たされていた。
この取り組みのようすは,動画にまとめられた。いじめは,「安心・自信・自由」の権利を侵害し,シンキングエラーとアンバランスパワーで深刻化し,伝染してゆく。生徒会活動で「いじめの起こらない集団」に変えてゆきたい。 → 🔗いじめゼロCM2020「文化祭で いじめ伝染予防」のコンテを末尾に掲載
生徒会活動では本部や各専門部の取り組みによって,学校生活における様々な課題を見抜くことや,自分の考えをもって行動することなど生徒の自発的活動が促され,達成感や充実感に結びついている。全校生徒が互いに認め,支え合う機会を多く持つことによって,学校生活が楽しく有意義なものとなっている。
授業では各教員が,互いを認め合い,支え合うことにつながる授業を展開できている。今後は互見授業で得たことをもとにいっそう授業改善に努めていく必要がある。
「部落解放を担う豊かな感性と表現力」を養うために,人権・部落差別解消教育とともに日頃の学校生活から「協働的課題解決力」や「互いを認め合い,支え合う集団づくり」を意識した取り組みを進めている。コロナウイルスによる感染拡大の状況は未だに収束の目処は立っておらず様々な制約もあるが,今後も知恵と工夫を出し合いながら,部落差別を始めとするあらゆる差別の解消に向けて取り組んでいきたい。