ハダノ元教頭が GIGAスクール と DX人材育成 について考えるブログ
「ICT活用で教職員の働き方改革というけれど、忙しすぎて覚える時間がない」という笑えない実態が学校現場にあります。落ち込んでいても仕方ないので、あえて笑い話にしてみたのが「ICTあるある」です。
今回お届けするのは……
研究授業をする若手学級担任に使わせたいと学年主任に頼まれ、画像を数枚作ったときのことです(2019年秋)。「この画像、どう使いますか。授業用の共有フォルダに入れてもいいし、クラウドに置いてもいいし。とりあえずメールで送りましたが……」と言うと、
学年主任は質問には答えず、画像を次々とカラープリンターで印刷すると、iPadでパシャパシャ撮り始めたのです。
「えーーっ、何してるんですか!」と止めようとすると、学年主任は、
ハダノは、頭を抱えてしまいました。校内情報化推進リーダーとしてICT校内研修も年6回実施し、デジタルデータの扱いもある程度できるようにしたつもりでした。しかし、「デジタルデータは、無劣化・省資源・共有可」ということを本当には理解していなかった教員がいたのです。デジタルのままデータを扱う方法についていろいろ研修している間、「さっさと印刷すればいいのに」と思っていたかもしれません。
「せっかくのデジタル画像をアナログ出力してまたデジタル化したら画質が悪くなってもったいないでしょ。教育事務所に指導案を提出するときに、わざわざ印刷してFAXするようなものですよ」と言ってみましたが、案の定ポカーンとしています。
学級担任に直接話すと、🔗「ソックリッカーで見せます」と言うので、Firebase Storage にアップロードしておきました。研究授業当日はそれでうまくいきましたが、「授業へのICT活用推進」という点では課題が残りました。
以下は、ICT校内研修でやったこと(ばっすい)です。
または、スクリーンショットを撮る(ホームボタンとスリープボタンを同時押し)。 撮った画像は、写真ライブラリへ入る。
ファイルを扱うために、Documentsというアプリを起動し、マイファイル-写真ライブラリを開く。
目的の画像の右下の(…)をタップし、アップロードを選択する。アップロード先として授業用の共有フォルダ【10.197.**.**-PC教室データ-●●中-提出フォルダ】のiPad写真 を選び、アップロード。
成功するとiPad写真フォルダへ入り、授業用モバイルPCからも取り扱える。別のiPadでダウンロードすると、ダウンロードフォルダへ入る。ネット接続用PCや校務用PCに取り込むためには、写真ライブラリ(カメラロール)へコピーしておくとよい。
iPadとPCをケーブルでつなぐと、SDカード内の写真と同じように取り扱えるが、いろいろ制限がある。
6.🔗Lightning to SD Card Camera Reader を使えば、SDカードを直接読み書きできる。SDカードの画像等は、PCで読み込める(書いたり消したりはできない)。ドライブ名は、PWSL16 や NO NAME などと表示される。
7.🔗Lightning to USB3 Camera Adapter を使えば、公用USBメモリを直接読み書きできる。画像等に限らずすべてのファイルを PC ⇔ iPad 間で自由にコピーできることになる。これまでは、Googleドライブまたは公用ハードディスク+提出フォルダ を使うしかなく、非常に面倒だった。
※ USBメモリは、SDカードより電気を食うので、ライトニングケーブルで電力供給を!
・ネットで画像を 右クリック(長押し)-名前を付けて保存(画像をダウンロード) もひとつの方法。
・文字を入れた画像を作りたいときは、パワーポイントでスライドを作り、ファイル-名前を付けて保存-ファイルの種類JPEG(*.jpg) で保存すると簡単。
・PC画面のスクリーンショットをとるには、PRTSCキーを押してクリップボードにコピーする。
・PhotoScape(フォトスケープ)というフリーソフトで、画像編集-メニュー-クリップボードから写真を読み込み で貼り付けられ、編集できるようになる。
・説明文が必要なら、プレゼンテーションソフト(Power Point,Google Slides,Keynote)を使う。
・単なるスライドショーなら、WindowsのフォトやiPadの写真アプリを使う。
原因を3つにまとめてみました。
2016年の佐賀県立学校不正アクセス事件以降、情報セキュリティ強化策としてネットワーク分離等が行われました。ハダノが勤務していた市では、A授業用ネットワーク(インターネット接続可)・B校務用ネットワーク(インターネット接続可)・C校務用ネットワーク(インターネット接続不可)の3系統に分かれていました。各系統ごとに専用のプリンタを使い、データの受け渡しも厳しく制限されています。私用USBメモリは禁止で、A~C間でデータを受け渡すための公用USBメモリ・公用ポータブルハードディスクが各校1つずつあるだけです。画像をデジカメから取り込むために、SDカードの画像ファイル読み込みだけは許可されていました。
こんなガチガチの制限があると、「ちょっと学年通信に画像を入れようか」と思っても、AやBのPCは学校に数台しかなくデータ移動の煩雑さを考えるとおっくうになってしまいます。
そもそも佐賀県は、事件当時もネットワークは分離していて、両系統とも不正アクセスされていました。内部に協力者がいたり、ID・パスワード管理がずさんだったりしたためと言われています。セキュリティ強化の方向性がずれているとしか思えません。こんな使いにくいシステムにしておいて、「教員はICTをもっと活用せよ」と命じられてもなあ……というのが本音です。
文科省の定義では、タブレットは可搬型PCということになっています。Windowsタブレット・Chromebookタブレットは、Windows・Chrome OSというデスクトップOSで動くので、ノート型PCと大差ありません。それに対してiPadは、iPadOS(iOS)というモバイルOSで動くので、PCというよりスマホに近い存在です。校務でPCを使い慣れた教員にとって、モバイル端末独特の操作を覚えることは第1のハードルとなります。
第2のハードルは、Apple独特の操作に合わせることです。日本語入力ひとつとっても、MicrosoftやGoogleのやり方とは違うので、戸惑います。Windowsのエクスプローラーにあたるアプリが、iPadでは貧弱で、🔗Documents というアプリを導入して少しまともになる程度です。PCとiPadをつないでも、いじれるのはカメラロールだけです。しかも、容量の大きいファイルをコピーしようとするとエラーが起きます。Androidのように、すべてのフォルダに自由にアクセスできるわけではありません。
容量の大きいファイルの場合、Gmailで送ろうとしてもエラーが起きます。PCだったら、自動的にGoogle Driveにアップロードされてリンクが送られるのに、iPadのGmailアプリではそうなりません。結局、 🔗Lightning to SD Card Camera Reader などを使って、PCにファイルをコピーするしかありません。
第3のハードルは、Apple独自のハードウエアをそろえることです。データ転送・充電用のケーブルは、USBがスタンダードです。🔗iPadも最近の上位機種は、USBになってきていますが、無印iPadはいまだにLightningです。低性能・低互換性・高価格でいいとこなしのケーブル規格は、ユーザーの利便性を損ねます。学校現場のように予算が限られていると、必要な分をそろえられません。早くUSBへ統一される日が来てほしいと思います。→ 🔗EU、すべてのスマホに「USB Type-C」義務付けで合意…アップルはiPhoneにType-Cを搭載するのか、それとも...
デジカメなどで撮った写真をそのままワードに貼るというのも、「画像あるある」です。トリミング・明るさの補正・リサイズぐらい、最低やるべきだと思います。「PhotoScapeなど手軽なフリーソフトがあるよ」と教えても、インストールすらしたことがない教員が多いのです。今どきのソフトは、ヘルプを見て基本操作を理解し、困ったらネットで検索するものです。教員は、紙のマニュアルを欲しがります。「ヘルプを見たらわかるよ」と言ったら、「印刷してくれないんですか。教頭先生は不親切です!」と怒られたことが何度もあります。
ネットワークや機材などメーカーや上の方々に要求し続けるべきものもあります。しかし現場の教員が画像ファイルの扱いを修得するには、人に理屈で教えてもらうよりも、実地に何度も何度も繰り返して慣れることが大切です。
「習うより慣れよ」です。