脱炭素の切り札とも期待され、いま世界中で研究開発が加速しているのが「核融合」です。
7月6日、京都大学ベンチャーで、核融合炉の基盤技術の研究開発を進める京都フュージョニアリングが、世界初となる発電試験プラントの建設を進める計画を発表しました。順調に進めば2年後の2024年までに、このプラントを用いて「発電試験」を実施する計画です。
→ 🔗核融合発電に向けた実証へ、京大発ベンチャーが“世界初”の試験プラント建設(ASCII STARTUP
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エネルギー問題とは?
ハダノは、中3理科「自然と人間」という環境問題の単元を教えるとき、こんなやりとりをしていました。
ハダノ先生、エネルギー問題って何が問題なんですか。
エネルギー保存の法則があるから、エネルギーはいくら使っても減らないはずですよね。
確かにエネルギーの量は変わらないよ。でもエネルギーを仕事に転換すると、エネルギーの質が変わってしまうんだ。
例えば、ダムの水を流して水力発電し、モーターで水をくみ上げたらどうなる?
水の位置エネルギー → 水の運動エネルギー → 電気エネルギー → 水の位置エネルギー
エネルギーが100%変換されれば、水は永久にぐるぐる流れることになるけど……ありえないですね。振り子だっていつか止まるし。
変換されなかった分のエネルギーはどうなったんですか。
振り子と同じように熱エネルギーに変わって散らばったんだ。こうなると回収して使うのは難しい。
つまり、エネルギーを使うと、質が悪くなるってこと。また、大量のエネルギーを使うことによる環境への影響も考えないといけないよ。
再生可能エネルギーだけにすればよいのでは?
化石燃料を燃やすと温室効果ガスが出て、地球がヤバいんでしょ。それぐらい知ってますよ、先生。
だったら、再生可能エネルギーだけにすればいいんじゃないですか。太陽光、水力、風力、バイオマス、地熱……
「再生可能」という言葉にだまされちゃいけないよ。
どこにでもあって、枯渇せず、温室効果ガスを出さないというメリットからつい期待してしまうが……
例えば、地球全部を太陽光パネルでおおったらどうなる?
真っ暗で寒くなるから照明と暖房に電気を回さないといけませんね。
100%変換できるわけじゃないけど、少しはおつりがくるんじゃないですか。
甘~い、甘すぎる。植物は光合成できる? 雨は降る? 風は吹く?
地球上で起きる現象のほとんどすべてが太陽エネルギーが元になっているんだよ。
今降り注いでいる太陽光の分で足りないから、過去何億年もかけて有機物に変換した分のエネルギーに手を出しているんだ。
いつも太陽光の恵を受けていることを忘れ、先祖の遺産を食いつぶす親不孝者ですね、人類は。
水素だのアンモニアだの新しいエネルギーにしたって、どうせ太陽エネルギーを変換したものだし。
エネルギー問題、当面の解決策は?
結局、身の丈に合ったエネルギー消費量に抑えるしかないわけだ。
しかし、今の生活を急に変えるのは難しいね。当面の解決策は?
地球が今浴びている太陽光以外のエネルギーを考えるんでしょ。
月で太陽光発電したものを地球に送るとか……遠すぎますね。雲の上で発電すれば、何とかなりそう……
地熱は、地球内部で生まれたエネルギーですよね。利用できる場所が限られるけど……
すばらしい! 実際に同じことを考える人もいて、取組が進められているよ。
結局、核反応による莫大なエネルギーが出発点になっているんだ。
※ アインシュタインの関係式による核質量の変化に伴うエネルギー
・核融合反応 :太陽エネルギー
・核分裂反応、核崩壊反応:原子力エネルギー、地熱
核崩壊は穏やかな分、発生エネルギーも微々たるものなんだ。だから連鎖的な核分裂反応を利用したくなる。
原子力発電所は、高レベル放射性廃棄物を生み出す。数万年も隔離しなければならない。トイレのないマンションみたいなものだ。
核融合発電は可能か?
先生、核分裂じゃなくて核融合を起こして発電することってできないんですか。
それとも、原子力発電と同じで放射性廃棄物が出るから意味ないとか……
核融合発電は理論的には可能で、原料は海水から得られ、暴走の危険もなく、高レベル放射性廃棄物も出さない夢の技術なんだ。
課題は多いが、成功すれば太陽の恵みを人工的に手に入れることになる。資源のない国でも技術さえあればOK!
ついに日本で世界初の核融合発電試験へ
十数年前に生徒とこんなやりとりをしていました。ついに日本で世界初の核融合発電試験が行われると思うと、感慨深いものがあります。
「ウクライナ問題で、ロシアからの天然ガスが入らないとピンチだ」など目先の損得にとらわれていては、地球の環境問題は解決しません。
本質的な願いを新しい方法で実現するために、バカになって非常識な案を考える……そんな中からイノベーションは生まれると信じます。
※ 生物の進化と同じ「変異と適応」で、天才でなくても創造性を発揮できる思考法が「進化思考」です。
分子進化学専攻のハダノから見ても筋が通っています。
イノベーションを体系化したバケモノ級の本です。